アレルギーで命の危険・周りが救える命 〜アレルギーを知ろう〜


2回目は“知識のない人達とのお付き合い”についてお話しました。

今回は“誤食による事故”です。

 

 

食物アレルギーの親の会での出来事

 

ご先祖様から沢山のいいものを受け取っているのだから“ちょっと不便なこと”“アレルギー体質”もあるがまま受け入れようと決心はしたものの・・・

 

やはり、何でも自由にお菓子を食べているママ友の子、ファミレスで好きなものを注文できるママ友に子を見ると羨ましく、又、妬みの気持ちさえ沸き起こってきました。

 

人の心って醜いですよね。

こういうの”シャーデンフロイデ”と言うんですって!

「他者の不幸、悲しみ、苦しみ、失敗を見聞きした時に生じる喜び、嬉しさといった快い感情」という意味です。

 

ドイツ語らしいですが、「こういう言葉が当たり前のようにあるドイツは凄い!」なんて思いました。

人として当然の感情、日本語に訳すと「人の不幸は蜜の味」ってところでしょうか?

 

さて、そんなことで悩んでいた時、“食物アレルギーの子どもを持つ親の会”が目に留まり入会しました。そして、イベントに参加しました。遠足です。

 

行先は遊園地。ランチ時間、アレルギー仲間とベンチで向かい合って座り、息子にパンを食べさせました。すると、前のお母さんが一言こう言ったのです。

 

「うちの子は小麦アレルギーがあるのでパンを近くで食べないでもらえますか?粉が呼吸器に入ると死んでしまうんで」と。

本人が食べなくても粉が舞い散ってショックを起こすというのです。実際、パン屋さんの前を通ると具合が悪くなるだとか。

 

その語気がやや強かったので「きっと私達親子は恨めしい目で見られているんだろうなあ」と思いました。そして・・・

 

○上には上がいるけど下には下がいる

○どんなに給料上がっても上には上がいて下には下がいる

○成績良くても上には上がいて下には下がいる

○障害があっても上には上がいて下には下がいる

 

そんなフレーズが木霊しました。

そして、「“絶対評価”しないで、他との比較“相対評価”ばかりしていたら精神的に持たないなあ」と思いました。

 

今までは「うちの子は好き嫌いが多くって嫌になっちゃう」の会話を耳にするだけで、嫌な気分になっていた私

「”普通に食事できる幸せ”を気にも留めてないヤツ!贅沢な悩み」と妬んでいた私

 

ママ達に物申したい気持ちをぐっと押さえるようにしました。

 

更に重度の重度、最重度の食物アレルギーの子ども達と接して「小麦アレルギーではない幸せ。牛乳、卵だけならまし」と自分を慰めていました。

「他人の不幸を見て自分を慰める」まだまだ人としての修行が足りないと感じていた私でした。

 

 

チーズ入りの給食を食べた女児死亡事件

 

「ナッツや蜂、蕎麦アレルギーは大人になるまで治らないことが多いけれど、牛乳、卵なんて小さいうちだけ、大きくなれば皆、改善していく」そんな風に思っていた私の常識を覆す事件が起こりました。

 

“チーズ入りの給食を食べた女児死亡事件”

 

東京都調布市の市立富士見台小学校で、小学5年の女子児童が給食を食べた後に体調不良を訴え、搬送先の病院で死亡しました。

女児はチーズなど乳製品にアレルギーがありましたが、その日の給食で出されたチーズ入りのチヂミを食べてしまいました。

 

女児に最初に出されたチヂミはチーズは除去されていました。

しかし、担任教諭が女児がおわかりを求めた時、誤ってチーズ入りのチヂミを渡したことが判明

 

更に悪かったのは女児はエピペン注射を携帯していましたが、「苦しいのは軽い喘息発作を起こしただけ」と本人が自己判断、担任教諭がエピペンを打とうとしたところ女児が拒否。

その後、事態は悪化。急変した女児を見て校長がエピペン注射をしました。

 

しかし、タイミングを逃したエピペンは命を救うことが出来ず、悲しいことに女児は給食を食べて僅か15分後には息絶え、救急車が到着した時点では死亡していました。

 

 

死ぬと注射 どっちがまし?

 

かつてはエピペン注射は保険もきかず1本15000円、しかも消費期限1年間。しかも、打つのが許されているのは本人か親が医療従事者だけ。

学校の先生が打つことは禁止されていました。

 

保育園に「エピペン注射を預かってください。いざと言うときは打ってください」とお願いしても「それは出来ません。連絡しますからお母さんが来て打ってください」と言われました。

 

「ショックを起こして数分後に死ぬかもしれないのに私の到着を待っていたら間に合わない!」と抗議しましたが「保育士は打ってはいけない決まりになっているので申し訳ありません」の一言。

 

仕方がありません。保育士が不親切なのではありません。国の問題です。

 

何とも意味のない注射・・・・

 

今までは病院に行かなければ打てなかった注射。それが、誤食事故が起こった現場で打てるようになったのに。アレルギーの子に救世主となる自己注射がやっと出来たのに“宝の持ち腐れ”苦しんでいる本人がエピペンがしまってある自分のかばんまで這って行って打たなくてはならないのです。

 

ショックを起こした時は一刻を争う事態、親が駆けつける時間的余裕はありません。でも先生は打てない変な注射でした。

 

これが問題視され、現在は他人が打ってもよくなりました。

医師でもない教諭がいきなり太い注射をするのは勇気がいること。 

 

“エピペンを打ったために死ぬことはないが、エピペンを使わなかったために死んでしまうことがある”だから勇気を奮って打ってほしいのです!

(※AEDだって同じ、使うのを躊躇していたため、人命を救えないことって結構あるんです)

 

この認識がない幼稚園、保育園、学校がまだあります。

 

ご両親は学校を訴えなかったとのこと。何とも言えない出来事でした。

 

 

学校は厳しくなった

 

この誤食事故以降、どの学校もかなり神経質になりました。エピペンの研修も教師は盛んに受けています。

 

アレルギー児を持つ家庭には今まで以上に細かい成分表が渡され、3回に渡るチェック

 

給食もアルミホイルで覆われ給食室に先生と一緒に受け取りに行く、他の生徒給食があるカートには紛れて置いてあることは決してありません。

 

でも、周りを当てにしてはなりません。自分を助けることが出来るのはまず自分であること。 

そんな時、実際、息子もアナフラシキーショックを起こしてしまいました。

 

 

ショック療法

 

息子のアナフラシキーショックの経験は14年間で4回

 

①卵ボーロ

前回書きました。紛らわしいものを与えたために起こしました。

 

②カレー弁当

弁当屋のカレー弁当で起こしました。裏には「落花生」の表示

息子を預けていた預け先のスタッフがまだ20代で“落花生=ピーナッツ”であることを知らなかったらしく食べさせてしまいました。

 

前回の項目「チーズ=牛乳成分から出来ている」ことを知らない若いアルバイトと似ています。

実はカレーのルーには市販のものでも「こく○○」とバージョンアップさえたものにピーナッツバターが含まれている物が多いのです。

 

また古い考えの弁当屋、”落花生”の表記。ちょっと古すぎます!若い層が売ったり買ったりするのですから考え直してほしいです。

 

③化粧品

私の化粧品に含まれている粉に反応しました。

未だに何故、呼吸困難起こしたか原因物質は不明ですが、混入している何かが空気中に舞って、息子の器官に入り苦しみました。

 

④ソフトクリーム

牛乳を飲めるようになったのは小学校6年生

「牛乳はもうOkになったのでソフトクリームは大丈夫。チョコレート入りのソフトクリームもOK」になりました。でも、高級な店のソフトクリームにヘーゼルナッツの粉が混入していました。

 

⑤ゴマダレ

市販のゴマダレ。こちらもゴマだけかと思ったらコクを出すためにピーナッツバターが練り込まれていました。

 

⑥風邪薬

ショックは起こしませんでしたが小児科で出された薬にカゼイン(=乳成分)が含まれていました。病気で病院に行ったのに、出された薬で状態は更に悪化してしましました。たまたま代診の先生で、息子がアレルギー児であるということが、申し送りされていなかったのが原因でした。

 

インフルエンザの予防接種も卵成分が含まれています。だから、注射液を100倍くらいに薄めた液を注射をする負荷試験までしていたのに、医師が平気で乳成分が入っている風邪薬を出したのです。

 

全て息子自身の誤りではなく、全部大人のミス。

 

でも、アナフラシキーショックがよほど苦しかったと見えて、ショックを起こしてからは毎回、裏の表示を気にしたり、何度も大人に「入っていないですか?」と自ら念押しするようになりました。

 

 

 

■神経質にならなくてもいい

 

こんな話を聞くと何だか恐ろしくなってきてしまいます。

 

ちょっと食べて湿疹が出る程度、あるいは血液検査で陽性反応が出ているからと神経質になっている親もいます。反対に血液検査ではOKでも食べるとショックを起こすこともあります。

 

呼吸困難を起こし血圧が下がってアナフラシキーショックを起こすほどの重度の食物アレルギーと、単なる湿疹程度のものとごちゃ混ぜにしているように思います。

 

「実際に食べて大丈夫かどうかが除去するかどうかの判断基準です」と主治医が言っていました。

 

アレルギーでなく除去の必要もないにの蛋白源の牛乳、卵を一切与えないで栄養不足になっている子どももいたりします。 

家庭では牛乳多少を飲ませているのに、預け先の保育園には無理難題を要求して哺乳瓶、洗うスポンジ、食事時に座らせる席も別にする等のケースもあります。

 

情報がありすぎて混乱しているようです。

親判断ではなく正確な医師の指示を受けてどこまで除去するか考えてほしいと思います。

 

こんなことがあるせいか、園側、学校側も大変なので親の要求だけを鵜のみにせず、今は細かい医師の診断書を提出することを要求する学校も増えてきています。

 

次回は「悩んでも治らないアレルギー」です。

 


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立石 美津子

投稿者プロフィール

幼児教育専門家・作家・講演家
32歳で学習塾を起業。現在は保育園、幼稚園で指導しながら執筆・講演活動に奔走。自らは自閉症・アレルギー児の子育て中。著書に『小学校に入る前に親がやってはいけない115のこと』『読み書き算数ができる子にするために親がやってはいけない104のこと』『心と頭がすくすく育つ読み聞かせ』『はずれ先生にあたった時に読む本』『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』等

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