5.グレーゾーンの子どもを理解しよう! ~学校選び~
- 2013/7/26
- 発達障害の基礎知識
株式会社パワーキッズ取締役
「エンピツらんど」創業者
立石美津子
はじめまして、立石美津子です。
18年前、株式会社パワーキッズを創業しました。幼稚園・小学校向け課外教室《エンピツらんど》を運営しています。全国280ヶ所の幼稚園・保育園に教室があり現在7000名の生徒が通っています。
私自身、自閉症児の子育てをしながら、現在、3歳から小学校3年生までの健常児・発達障害児の指導法の開発に奮闘中です。
つい先日、作家デビューし著書に「小学校に入る前に親がやってはいけない115のこと」「読み書き算数ができる子にするために親がやってはいけない104のこと」(中経出版)があります。AKBを抜いて一瞬、第一位で累計3万部売れました。こちらも是非、ご覧ください。
今週のコラムでは、発達障害についてお話させていただきます。
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5.小学校選び 普通学級か通級か特別支援学級か特別支援学校か
■小学校の種類と就学時健診
小学校には下記の4種類あります。このいずれかに入学することになります。
特別支援学校
盲・聾・知的障害児のための独立した学校
2006年までは「養護学校」という名称
※先生2 対 生徒7(重度重複児のクラスは2対3)
特別支援学級(通常学校の中に併設)
2006年までは「特殊学級」という名称
※先生1 対 生徒8
通級
普通学級に籍を置きながら特別なクラスに何日か通う形式
※全ての学校に併設されていないので通級クラスのある学校へ 週何日か通う形になる。
普通学級
通常の健常児のクラス
※先生1 対 生徒35~40
さて、10月・11月は就学時健診があります。小学校入学前に行われる健康診断です。ここでは身体の発達や、知的発達の度合いが検査されます。健常児であれば普通学級に心身に障害があり特別な支援が必要な子どもの場合、就学相談を受けるよう指導されます。 この就学時健診、自治体には実施する義務がある一方で、保護者が子どもを受診させるかどうか義務はないのです。ある母親が子どもが重い自閉症であることをわかっていながら「子どもがフィルターに引っかかるのを避けたい!どうしても普通学級に入学させたい!」という親のプライドから、何だかんだ理由を付けて受診せず、入学式前日まで行政から何度か連絡があっても「風邪を引いた」「旅行に行く」など理由をつけて隠れていました。そのまま入学式当日を迎え希望通り普通学級に入学することができました。
しかし今、大変な苦労をしています。授業内容がさっぱりわからず置いてきぼりにされています。友達もできません。入学式の日に早速、翌日からは親同伴でなければ受け入れられないと言われ、給食まで一緒に食べています。母親は自分の子どもと他の子どもの違いを毎日、目の当たりにしてストレスが溜まり、子どもにも更に辛くあたるようになりました
■遅すぎる就学時健診
就学時健診は11月、遅すぎます。発達障害の場合とても見えにくい障害です。知識がなければ親も気づきません。しかし、生まれてこの方、普通の子どもだと思って育ててきたのに、小学校入学半年前の検診時に突然、障害があることを告げられます。3月までの5ヶ月の短い期間に障害を受け入れ学校まで選ばなくてはならない事態に陥ります。親は悩み苦しみます。
世田谷区では全国に先立って4歳半の検診のシステムがあります。これは任意ですが全区民に通知を出し、発達障害児の早期発見に力を入れています。年中児の時期に親に告知し、じっくりと子どもにあった学校を選んでもらおうという訳です。しかし、世田谷区のような検査を殆どの自治体では行っていません。ですから、できるだけ早い時期に障害に気が付き子どもに合った小学校を選びましょう。
■個別支援計画の存在
特別支援学校・特別支援学級に在籍すると個別支援計画というきめ細かな支援計画が立てられます。概要はざっとこんな感じです。「個別の教育支援計画は障害のある児童生徒の一人一人のニーズを正確に把握し、教育の視点から適切に対応していくという考えの下、長期的な視点で乳幼児期から学校卒業後までを通じて一貫して的確な教育的支援を行うことを目的とする。作成学級担任や学校内及び他機関との連絡調整役となるコーディネーター的役割を有する者が中心となって具体的な内容を確定する。児童生徒への適切な教育的支援を行う場合に、保護者は重要な役割を担うものであり、この作成作業においては、保護者の積極的な参画を促し、計画の内容について保護者の意見を十分に聞いて計画を作成又は改訂することが必要である」とされています。
普通学級に在籍するとこれは作成されません。子どもに障害があった場合、どちらのクラスに在籍した方かよいかこれで明確になると思います。
■就学時健診を無視した私
私の場合は就学時健診は義務ではないと知っていましたから通知の葉書が届いても無視していました。最初から“特別支援学校(旧 養護学校)”への入学を強く希望していたからです。障害を隠して普通学級に入学させたお母さんと真逆です。私は元々、特別支援学校の教員免許を持っていて知識もある程度ありました。ですから息子は保育園年長の時点でオムツこそは外れていましたが言葉は全くなく、着替え・手洗い・歯磨きなどの身辺自立はまだまだでした。その状況で特別支援学級(旧 特殊学級)がいくら普通学級にいる健常児と交流できると言われても、自分のことさえできない、又、周りにも興味はない社会性も育っていない息子にとってハードルが高いと思ったわけです。実際、主治医に「ソーシャルスキルトレーニングを受けさせたい」と申し出た時も「自分のことさえできない子にまだ早すぎる」と冷たく断られました。又、特別支援学校の生徒3名 対 先生1名という教員の多さにも惹かれました。
特別支援学校で小2までの2年間過ごしました。手洗い・着替え・おまけに時計を読むなど息子のできない部分をクリアするような細かい個別支援計画がきちんと立てられ指導がされ習得できました。
■半強制的な転校命令
しかし、小学校2年生の時、転校を余儀なくしなくてはならない事態に陥りました。 息子は自閉症ですから元々文字や記号、数字に強い関心がありました。たまたま国語の授業で漢字を死ぬほど書いていました。しかも、相当綺麗な字で。形を写真のように脳に焼きつけ再現することが得意な自閉症にとって漢字を書くことなど楽勝でした。読めなくても単に図形を写しているのです。
そこへ東京都指導主事の巡回がありました。「何でこの子がこの学校に在籍しているんですか」と学校側は強く言われました。「いや、保護者の方の強い希望で入学させているんです」と答えましたが、指導主事の言葉は神の声、強制力はないものの学校側は困りました。「転校しませんか?」と何度も言われ私は「6年生までここに置いて下さい」と懇願しました。「見学だけでも行きませんか?」と言われ、担任と一緒に何か所か地域の公立小学校に併設されている「特別支援学級」に見学に行きました。そして渋々3年生から特別支援学級に転校せざるを得ない状況に陥りました。
先生には「将来、絶対に普通学級には転校しませんから」と釘をさしておきました。「あなたのようなお母さんは大変珍しい」と言われました。地域の教育委員会の人からもレアケース「自分の子どもより高い学校を希望する保護者がほとんどです。立石さんは珍しい人だ。就学時健診で特別支援学校・特別支援学級を進めても何が何でも普通学級と言われ、中には“うちの子どもを馬鹿扱いした”と裁判にまで持ち込まれたりするんです」と嘆いていました。結果、普通学級の中に障害児が交ざり担任はてんてこ舞い、学級崩壊。又、特別支援学級にオムツが取れない特別支援学校判定の子どももいて指導の基準をどこに合わせたらよいか担任が困る状況に陥っています。中には鬱になって退職する先生もいます。 これは健常児の子ども達にとっても大変迷惑な状況です。
私は単に“子どもにとって最適な教育環境”ただそれだけを基準に学校を選んだだけです。能力に合わない学校に入学させて本人が幸せな筈はないと考えたからです。こうして「特別支援学校→特別支援学級」と進みましたが、タイミング的に息子の発達と「教員1名対生徒3名の特別支援学校から教員1名対生徒8名の特別支援学級への転校」は良い選択だったと思っています。
自立へ向けて訓練の写真
手厚い特別支援学級の授業風景
■学校選びの順序
幼稚園・保育園は義務教育ではありませんから特別支援学校や特別支援学級はありません。義務ではないので極端な話、行かなくてもよいのです。しかし、義務教育では“子どもには教育を受ける権利があり親は子どもを学校に通わせる義務”がある訳です。
さて、自分の子どもが「怪しいな」と思った時「とりあえず普通学級に通わせて、それで着いていけなければ別の学校に転校しよう」と考える人がいます。しかし、これはよくない選択です。何故なら、子どもにとっての1年は大人の10年分くらい大きな意味を持つからです。1日1日、一瞬一瞬がとても大切です。ですから「様子をみよう」なとど言っていたずらに月日をやり過ごすことはよくありません。 “まず小さな集団に入れ、成長をみて上の学校に入れる”この順番が良い順番です。私がレアケースと言われたように“普通学級で頑張ってきたがとうとう着いて行けなくなり途中から特別支援学級に転校”はかなりあるケースなのに対して、下から上のクラスに行くのは至難の業と実際言われています。そしてこんな噂を耳にしてしまうと「一旦、特別支援学校(あるいは特別支援学級)に入れてしまうと上には這い上がれない」と思い、何が何でも取りあえず普通学級(あるいは特別支援学級)と考えてしまう親も多いようです。
しかし、普通学級のスタンスは一斉指導です。発達段階の異なる子ども達を40人近く抱えて誰に焦点を当てて授業したらよいかわからない状況 です。先生は文部科学省が作ったカリュラムを一律にこなすのに精一杯 でこの子にはこれをやらせた方がいいと思っても実際にはできない状況 です。ですからここに入れても伸びるかどうかよく考えてみてください。
こんな風な順で二次障害を起こさないようにしていってください。
何がなんでも普通学級と入学させられる。
↓
わからない授業に45分間、1日何コマも着席しなくてはならない毎日が続く。
↓
席を立ち何度も叱られる。
↓
集中出来ないので学力が低下する。達成感を味わえない。
↓
友達が作れない。苛められる。 楽しくない学校生活 不登校に……
■グレーゾーンの子どもはどこへ入学すればよいか
さて、限りなくグレーに近い子ども、知的遅れのない発達障害児の場合はどの小学校に入学すればよいのでしょうか。発達障害児だけ集めたクラスは残念ながらありません。通級を利用します。 通級に通うということは障害をカミングアウトしているということ。少なくとも障害があることを学校側に伝え35人クラスでも個別に配慮してくれるように伝えます。幼稚園・保育園から申し送りをしてもらい配慮・支援をしてもらうようにしましょう。
障害について隠していると多動のため集中力がないことに対して頻繁に叱られ、学習障害のため勉強が出来ないのを努力不足と思われ、子ども自身が辛い学校生活を送ることになります。
■クラスメイト・他の保護者への説明
又、クラスメイトから「どうして、あいつだけ立ち歩いて叱られないんだ」と思われないように本人告知した上でクラスメイトへのカミングアウトもする必要があります。もちろん他の保護者からも同じ目で見られてしまう危険がありますので、保護者会などを通しその特性を説明する必要があります。
以上のことを参考にしてお子さんの特性に合った学校選びをしましょう。
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立石美津子
1961年 12月大阪市生まれ
聖心女子大学 文学部教育学科・初等教育課程にて幼稚園教諭・小学校教諭免許取得後
石井式国語教育研究会にて故石井勲先生の元、全国の幼稚園・保育園に漢字教育を普及
「漢字はひらがなより易しい」という石井先生の教えにより“障害児教育が教育の基本”“障害時に理解し易い指導法は健常児にも分かり易い”の考えから、佛教大学にて特別支援学校教諭1種免許を取得し、障害児の漢字教育を行う。
平成7年 株式会社パワーキッズを設立。自らも自閉症児(知的障害を伴う自閉症なので発達障害の範疇には入らない)の子育てをしながら、現在、エンピツらんどの指導責任者として3歳から小学校3年生までの健常児・発達障害児の指導法の開発に奮闘中
著書に「小学校に入る前に親がやってはいけない115のこと」「読み書き算数ができる子にするために親がやってはいけない104のこと」(中経出版)がある。
ホームページ http://www.enpitsuland.com/
立石美津子のオフィシャルページ http://tateishi-mitsuko.com/
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