日本の音楽、古典の魅力~コミュニケーションのヒント~
- 2013/4/18
- 暮らし/趣味
公益社団法人 能楽協会正会員 能楽師 小鼓方
森澤勇司
みなさん、はじめまして! 能楽師小鼓方の森澤勇司です。
能楽の舞台で小鼓を演奏しています。
明治からの音楽教育の改変で日本の音楽に触れる機会は少なくなってしまいましたが、
日本の音楽に触れることは非常に大切なことだと考えています。
そこで私のコラムでは、母から子に語って伝えたい能楽や
古典にまつわるお話をお送りいたします。
専門的なことではなく親子のコミュニケーションに役立つものを選んでご紹介します。
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むかつかするという事
こんにちは!
早いもので私のコラムも4回目となりました。今日は子育てに限らず使えるコミュニケーションのヒントをお伝えします。ついつい「ムカッ」「イラッ」としてしまう方にはぜひ知っていただきたい内容です。
昨日に引き続き今日も宮本武蔵の「五輪書」からお届けします。
今日のテーマはズバリこれ!
【むかつかするという事】
この言葉は古語なんですよ。最近はまわりに良い仲間が多いのでこんな言葉も聞くことがなくなりましたが、この「ムカッ」というのは兵法ではれっきとした心理戦として語られています。では、どういう時にこの「ムカッ」とした状態になるのでしょうか?
1、きわどき心(危険な状態)
2、むりなる心(できないと思うこと)
3、思はざる心(予期せぬ事)
実はこのような時に「ムカッ」とする状態になるそうです。
ちょっと脱線しますが……上記のように「言いたいことは3つあります」というのは近年発明された方法ではなく古典の中ではよくある手法なんです。
話は戻って、それではこの「ムカッ」をコントロールするにはどうしたらいいか考えてみたいと思います。
3パターンをどのように乗り切れば良いのか?
◆まず1つ目の「きわどき心」です。
これは危険な状態です。逆に言うと安全な状態ならば「ムカッ」としないのです。子どもが急に走り出したり、道路に飛び出しそうになったり、歩いている最中に自分の前に子どもが回りこもうとしたところに後ろから自転車が走ってくるなんていうのもかなり危険な状態です。これは前回のコラムでご紹介した言葉の使い方を参考にして、予防できるところは予防していきましょう。
自分の思考の向け方としてはこの質問を繰り返すことです。
「どうしたら安全か?」
こういう時に頭がスッキリするコツがあります。
それは、紙に書くことです。
そろばんなどの練習をした方ならともかく、私は暗算よりも紙に書いて計算したほうが早く答えが出ます。自分が「ムカッ」としてしまった事柄を3つほど書いてみて「どうしたら安全か?」紙に書いてみるとすぐに答えが出てきます。
◆では2つ目は「無理なる心」です。
これも1つ目と同じ方法で心の準備をしていきます。無理なことってなんでしょう。突然泣き出す、おもらしをする、おもちゃを欲しがる……ほかにどんなことがあるでしょうか。
これも逆に言うと「できることは何か?」を考えることです。
どうすればできるかという視点でものを考えると、本当にできないことが見えてきます。
突然泣き出す。→原因を考えてみる。
おもらしをする。→時間を決めてトイレに連れてゆく。
おもちゃを欲しがる。→おもちゃ売り場の近くを通らない。
などなどいろいろ対応策が考えられます。
◆それでは最後3つ目「思わざる心」です。
予期せぬ事って何でしょう。ご飯を運んでいたらヒックリ返したり、ドアに手を挟んで急に泣いたり、といろいろありますね。我が家でも年末に揺れる椅子で遊んでいたらベランダのガラスに激突、まあるくガラスが割れてしまう事件がありました。カーテンがかかってなかったら大変なことになっていました。
大事な話をしようと思ったらいきなり電話がなったり、子どもが寝ているのでyou tubeにアップする動画を撮っていたら終了間近に突然起きて泣き出したりなんていうことも多々ありました。
ではこれはどうすれば良いかというと……
予想すればいいんです。
絶対あることは、絶対あります。子どもが突然泣くことは、あります。あるのが普通なんです。最近「ムカッ」としてしまったことを1つでもいいので書き出してみてそれが予想できなかったか考えてみましょう。
これら3つだけでもかなり「ムカッ」とする心理状態になることが防げるのではないでしょうか。
「むかつかする」という心理状態になっても、実は戦う相手がいるわけではありません。
「ムカッ」としてしまうことの準備ができると、安全に、無理なく、想定内の安定した心の状態を作りやすくなります。
みんさんも試してみてくださいね!!
最終回となる次回は、子育てに対する私の想いを、改めて綴ってみたいと思います。お楽しみに。
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【森澤勇司】
公益社団法人 能楽協会正会員 能楽師 小鼓方
・1967年 東京都世田谷区生まれ。父は会社員、実家は商店経営という家庭環境で育つ。
・幼少期、外で遊ばせてもらえない環境だったので家にある本を読み空想を広げることを楽しみに育つ。いうことを聞かないと火箸で手を焼かれるような家庭環境で育つ。
・子どもの頃から、柔道、アメリカンフットボール、ギターなどを学んでいたが、高校卒業時に見た日本のミュージカルで「日本人には日本のものがよい」という思いをもち日本らしい仕事につくことを決意。「能楽」に興味を抱く。
・3年に1度の国立能楽堂養成事業2期生募集にであい思い立って3か月後には見たこともない能楽の修行に入る。
・平成11年独立「森澤勇司独立記念能」は高円宮憲仁親王も鑑賞。終演後「よい舞台でした」とお言葉を賜る。
・2010年「楊貴妃」出演中に脳梗塞のため集中治療室に入る。
・リハビリのために受講したアクティブブレインセミナーに感銘を受け講師資格取得。
・その後、コーチング、マーケティングなどを学ぶ中で海外自己啓発セミナーは「風姿花伝」「五輪書」など明治以前に日本で語られている教育法とほぼ同じだということを発見する。
・現在、能楽舞台への出演、小鼓の稽古、販売、日本の文化に関するセミナー、講演などを行っている。
森澤勇司WEBSITE
http://www.nohgaku.com/
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