日本の音楽、古典の魅力~宮本武蔵に学ぶ子育て~



公益社団法人 能楽協会正会員 能楽師 小鼓方
森澤勇司

みなさん、はじめまして! 能楽師小鼓方の森澤勇司です。
能楽の舞台で小鼓を演奏しています。
明治からの音楽教育の改変で日本の音楽に触れる機会は少なくなってしまいましたが、
日本の音楽に触れることは非常に大切なことだと考えています。
そこで私のコラムでは、母から子に語って伝えたい能楽や
古典にまつわるお話をお送りいたします。
専門的なことではなく親子のコミュニケーションに役立つものを選んでご紹介します。
 
………………………………………………………………
 

宮本武蔵の五輪書とは?

こんにちは!能楽師 森澤勇司です。
今日も読んでいただきありがとうございます。
 
オリンピックのことを「五輪」って言いますね。
この「五輪」は昭和39年の東京オリンピックの時に、ある新聞社が宮本武蔵の「五輪書」からつけたそうです。宮本武蔵「五輪書」というのは兵法の極意が書いてある本と言われています。
 
そのイメージで本を読んでみると受ける印象はほぼ「コミュニケーション」です。
 
全編で「拍子」という言葉がキーワードになっています。現代でも上演されている「高砂」「老松」という曲の演奏心得まで言及されているほど能楽の拍子に関して重要視されています。更に「こうしなければいけない」という内容ではなく常にテストしてみて良いものを選んで実践するようにといった提案型もこの本の特徴です。
 
いわゆる、ビジネス用語で言うPDCA(プラン、ドゥ、アクション、チェック)ですが、この本が書かれた1600年代にもこの考え方はすでに日本にもあったんですね。
 

 
 

子どもに、伝わるよう話していますか?

今日はこの中から子育てに役立つ内容を一つ選んでお伝えします!
 

【役に立つように教えること】

 
「何度言ってもわからない!」「言っても仕方がない」などと言われたり、また、言ってしまったり、もしくは自分で言わなくて誰かが言っているのを聞いたことはないでしょうか。
 
宮本武蔵はこのことに関してこんなふうに語っています。
「何時にても役に立つように稽古し、万事にいたり、役に立つように教ゆること、これ兵法の実の道なり」
いつでも使えるように教えることが「教えたことになる」ことです。「何度言ってもわからない」のではなく伝わるような言葉を工夫することも教える側に必要な柔軟性です。
「伝えた」と「伝わった」の違いです。
 
 

言葉を肯定系に変えると伝わります!

ただし一生懸命伝えようとして、してはいけないことを行う場合があります。これは重要なことなのでしっかり読んでくださいね。
 
あるときに知人が4歳のお子さんに対してこんなことで悩んでいました。
「何度注意しても同じ失敗をする」
ではどういう注意をしていたのでしょうか。
「おもちゃを落としても道路に飛び出さないように」
そしてこれを何度も言い聞かせていました。
 
近代の心理学では「○○しない」と言うことは人間の脳は理解ができないということが定説です。
 
日本にも同じような話があります。
 
ある男が悟りを開くためにはどうすればよいかお坊さんに訪ねました。その時言われたことはこんなことです。
「明日まで猿のことを考えるな」
その時から猿が頭から離れなくなったそうです。
 
これと同じで「おもちゃを落としても道路に飛び出さないように」ということを繰り返すとこんなことが起こります。
「おもちゃを落として道路に飛び出す」
これが頭にイメージされて言葉で否定してもその通りの行動をしてしまいます。
 
特に小さい子には「否定形」にならないように言葉を工夫することが大切です。
「おもちゃを落としたらお母さんの手を握って」とか「おもちゃを落としたらお母さんの足につかまって」などと具体的な行動を促す言葉がけが宮本武蔵の語る「実践で役に立つこと」になります。
 
日々の生活の中に伝わらなかったら言葉を変えてみるという習慣はコミュニケーションで重要なポイントになります。褒めるというのもできないことを無理に褒めるのではなく、褒めるべきことを一番最後に持ってくると子育てには効果的です。
 
古典は難しいと言われています。表面的な意味ではなく実際にこうした考え方を取り入れることは決して無駄ではありません。こんな実践できる智慧を次世代につないでいけたらいいですね!
 
言葉を変えてみた結果もコメントいただけると嬉しいです。
 
次回はもうひとつ「五輪書」の中からつい怒ったりイラッとしてしまう方に役に立つ内容を紹介させていただきます。
 

 

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【森澤勇司】
公益社団法人 能楽協会正会員 能楽師 小鼓方
・1967年 東京都世田谷区生まれ。父は会社員、実家は商店経営という家庭環境で育つ。
・幼少期、外で遊ばせてもらえない環境だったので家にある本を読み空想を広げることを楽しみに育つ。いうことを聞かないと火箸で手を焼かれるような家庭環境で育つ。
・子どもの頃から、柔道、アメリカンフットボール、ギターなどを学んでいたが、高校卒業時に見た日本のミュージカルで「日本人には日本のものがよい」という思いをもち日本らしい仕事につくことを決意。「能楽」に興味を抱く。
・3年に1度の国立能楽堂養成事業2期生募集にであい思い立って3か月後には見たこともない能楽の修行に入る。
・平成11年独立「森澤勇司独立記念能」は高円宮憲仁親王も鑑賞。終演後「よい舞台でした」とお言葉を賜る。
・2010年「楊貴妃」出演中に脳梗塞のため集中治療室に入る。
・リハビリのために受講したアクティブブレインセミナーに感銘を受け講師資格取得。
・その後、コーチング、マーケティングなどを学ぶ中で海外自己啓発セミナーは「風姿花伝」「五輪書」など明治以前に日本で語られている教育法とほぼ同じだということを発見する。
・現在、能楽舞台への出演、小鼓の稽古、販売、日本の文化に関するセミナー、講演などを行っている。
森澤勇司WEBSITE
http://www.nohgaku.com/

 
 
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黄野 いづみママそらディレクター

投稿者プロフィール

株式会社ママそら ディレクター
株式会社LIVLA 取締役
ピープルビヨンド株式会社 取締役
16歳で単身アメリカへ留学。学習院大学に入学・卒業し、その後に再度渡米。テレビ局や日系メディア会社にてインターンとなる。帰国後は出版社で、約10年間、広告営業や企画編集ライターなどに従事するとともに、プロジェクトマネージャー、チームリーダーを経験する。出産を機に独立。
「子どもの輝く未来のために、子どもの心を育み親子でHAPPY に!」をコンセプトに、木製玩具、アートグッズの輸入販売や心を育む遊びの提案を行っている。海外生活の経験を活かし、楽しみながら英語に触れることのできる遊びも紹介。グローバル時代を生きる子どものために、豊かな感性や表現力、発信力、人間力を育むプロジェクトに取り組んでいる。
株式会社ママそらでは創業時からディレクターを務め、複数のプロジェクトの統括やスタッフ管理・育成に携わるとともに、ライター育成も行っている。
HP  http://www.twinklekidsstar.com
Facebookページ https://www.facebook.com/kidsstarjapan

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