リトル・ダンサー「ママ、この映画見て!Vol.13」



中1終わりから映画好きになり、洋画・邦画を問わずに映画館通い。
映画もDVDやテレビで過去の名作が簡単に見られる時代になりました。
映画館もフィルムからデジタルへ移行して、どんどん進化していますが、中でも映画で昔から描かれる普遍のものは、「親子の愛」です。

推定6,000本観た映画の中から、ママたちに観ていただきたい名作を毎回1本ご紹介します。
ご紹介する映画はDVDレンタルでご覧いただけるものから、選んでいます。
公認映画検定2級・美容室リグレッタ・オーナー/八木勝二


13.【リトル・ダンサー】

2000年イギリス映画・パラマウント映画、103分 モノクロ
監督=スティーブン・ダルドリー、脚本=リー・ホール、音楽=スティーブン・ウォーベック
出演=ジェイミー・ベル、ジュリー・ウォルターズ、ゲアリー・ルイス、ジェイミー・ドラヴェン、ジーン・ヘイウッド、ステュアート・ウェルズ

(ストーリー)

1984年、ストライキに揺れるイングランド北部の炭坑町ダーラム。母親を亡くし、父(ゲアリー・ルイス)も兄のトニー(ジェイミー・ドラヴェン)も炭坑労働者のビリー(ジェイミー・ベル)は、ボクシング教室に通っているが、試合に負けてばかりの11歳。そんな時、偶然目にしたウィルキンソン夫人(ジュリー・ウォルターズ)のバレエ教室に強く惹かれ、女の子たちに混じって練習するうちに夢中になっていく。

ウィルキンソン先生はどんどん上達するビリーに自分が果たせなかった夢を重ね合わせ、熱心に彼を教える。しかし、家族の金をバレエに使っていたことがバレてしまい、父は激怒。ビリーは悔しさをぶつけるように、一人で踊っていた。

だが、ストライキが長引き町中が暗く沈んでいるクリスマスの夜、親友マイケル(ステュアート・ウェルズ)の前で踊るビリーの姿を見て、息子の素晴らしい才能に初めて気づいた父は、彼をロンドンの名門、ロイヤル・バレエ学校に入学させる費用を稼ぐため、スト破りを決意する。それは仲間たちへの裏切り行為であった。だがスト破りの労働者を乗せたバスの中に父を見つけたトニーが、バスを追いかけて必死に止め、父は泣き崩れる。

その事情を知った仲間たちがカンパしてくれ、ビリーは学校に行くことができた。15年後。バレエ・ダンサーになったビリー(アダム・クーパー)は、父と兄とマイケルが客席にいるウエスト・エンドの劇場の舞台で、スポットライトに包まれながら堂々と踊るのであった。

(鑑賞)

タイトルの「リトル・ダンサー」に得も知れぬ嫌悪感を覚え、今まで未見で済ませていたことを後悔させられるすばらしい映画でした。

確かに原題「ビリー・エリオット」では、日本では「何をした人なの?」って程度でしょうから、それだともっと分かりにくいのでしょうが、昭和時代のような気の利いたタイトルが近頃ものすごく少ないような気がします。「僕がバレエ・ダンサーを夢見てはいけないの?」というサブコピーの方が映画の本質を現しているような気がします。

貧しい境遇に落ち込んでいるわけでもなく、母が亡くなり祖母の世話をしながら、炭鉱のストライキで仕事がない兄と父に当たるでもなく、素直に生きるものの、目当てが見当たらないビリーの悶々の日々に、バレエと出会うことで生きがいが生まれる過程の描写はとても素敵です。

最初は父親に隠していましたが、そのうちばれてしまい、「バレエを習う?そんなお金がどこにあるんだ」と止めされられてしまいます。
でも、ビリーの素質を見抜いたウィルキンソン先生は、無償で個人授業を始め、ロイヤルバレエの学校の入学試験の手筈まで整えてくれます。

このシーンを始めとする、ダンスシーンの躍動感はウキウキワクワクする少年の心をうまく表現しています。
父親は、ビリーの夢が本物だと分かり、叶えてあげるためにスト破りの裏切りさえしてしまいます。親子の愛がここから急速に加速して動き出します。

怒鳴ってばかりだった、父と兄もビリーの夢を理解し応援していくようになる様は、やはり親子ってそういうもんだよね、という感慨がいっぱい詰まったシーンです。

本来の親子って、こういうものです。
分かり合えた時って、いいものですよね。

最後のシーンでは25歳のビリーが、夢の舞台を踏むシーンに飛びます。
応援するダーラムのみんなも14年間で歳がいったり、成長したりしています。
一人ひとりの14年間が表情に表れており、とてもいいラストシーンでした。



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