3.グレーゾーンの子どもを理解しよう! ~友達の子どもが発達障害、どう接したらよいの?~



株式会社パワーキッズ取締役

「エンピツらんど」創業者
立石美津子
はじめまして、立石美津子です。
18年前、株式会社パワーキッズを創業しました。幼稚園・小学校向け課外教室《エンピツらんど》を運営しています。全国280ヶ所の幼稚園・保育園に教室があり現在7000名の生徒が通っています。
 
私自身、自閉症児の子育てをしながら、現在、3歳から小学校3年生までの健常児・発達障害児の指導法の開発に奮闘中です。
 
つい先日、作家デビューし著書に「小学校に入る前に親がやってはいけない115のこと」「読み書き算数ができる子にするために親がやってはいけない104のこと」(中経出版)があります。AKBを抜いて一瞬、第一位で累計3万部売れました。こちらも是非、ご覧ください。
今週のコラムでは、発達障害についてお話させていただきます。
 
 
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3. 友達の子どもが発達障害、どう接したらよいの?

 

■当事者の親が言われて傷つく言葉

昔ほどではありませんが、発達障害を後天的なものと思っている人がまだいます。私が実際言われて傷ついた言葉です。
 
脳の障害とわかっていない友達や親戚からの言葉
 
「もう少し愛情かけあげれば。愛情不足だから寄って来ないんだよ」
「絵本の読み聞かせしているの?もっと言葉がけしてあげれば?」
「自由伸び伸びもいいけれど、少しは躾したら?」
「個性的だね」
「子どもは皆そうよ。心配し過ぎ!」
 
「死ぬほど愛情かけてます!」「絵本も沢山読み聞かせているし、赤ちゃんの頃からずいっと話しかけてるわよ!」「躾けても躾けてもうまくいかないのよ!」「個性?こんな個性ってある?」と心の中で叫びました。健常児であればほとんど絵本の読み聞かせもせず、寡黙なおとなしい親に育てられても、元々生まれた時から関わりたい気持ち(それを赤ちゃんの社会性というのでしょうか)があるので一切口を聞かない、話さないとなんてことはありません。
 

 
病気と認識している友達からのきつい言葉
 
「大きくなったら治るんでしょ」
「治療しているの?」
「心が病んでだね。鬱みたいなもんでしょ」
 
治らないんです。自閉症は胎児の時からお爺さんお婆さんになっても、土に帰っても自閉症なんです。訓練により状態は改善されることもありますが治ることはありません。病気ではないので“治療”という言葉は使わないで「療育訓練」と言ってほしかったです。そして、心なんて病んでいません。元々の脳の問題なのです。
 

■幼稚園に発達障害のお友達がいます。
立ち歩いても叱られないその友達に対して納得がいかないようです。
「何で○○君はいつもウロウロしているの?」
「ギーギー騒ぐの?悪い子だね」
と発達障害の友達のことを言う我が子にどう説明すればいいですか?

「あのね。○○君は自閉症という脳の障害があるから一人でいたり、騒ぐのは出すのは仕方がないんだよ」「△△君は注意欠陥多動性障害(ADHD)だから、じっとしていられないの。ウロウロしていても部屋から出て行っても仕方がないの」こんなこと説明してもわかるわけがありません。
 
ではどう言えばいんでしょう。発達障害児を積極的に受け入れている幼稚園があります。その中に友達の水筒からお茶を飲んだり、友達のお弁当に手を出してしまう子どもがいました。そのことを健常児にどう理解させているかを園長先生に聞いたことがあります。
担任は障害の子が他の子どもの水筒から飲んだ時、「何度言ったらわかるの!お友達の飲んじゃ駄目だって何度も言ったらわかるの!」という言い方を絶対にしません。
「○○君の水筒はこれだからここから飲もうね」と何度も根気よく教えます。するとその後ろ姿を見て子ども達は自分の水筒から飲まれても大騒ぎして怒ったりしません。「○○君はここから飲むんだよ」と子どもながらに優しく教えています。担任の後ろ姿を見て自然と学んでいるのです。
 
「足の速い子、遅い子がいるよね。先生のお話を静かに聞くのが得意な子、不得意な子がいます。だから○○君が教室内をウロウロしたり、大きな声を出すこともあるけれど優しくしてあげましょうね」と言えば幼児でも理解できます。
 
異質なものを排除する気質が特に日本人は強いものです。「右に習えの社会」です。その中でも発達障害児はその行動から「変わった子」として子どもには映るようです。みんなと同じではないと仲間はずれにしようとします。
 

■障害のある友達と一緒に過ごすことにより
足を引っ張られると思ってしまう

これは以前、私のブログに書いたことです。
 
※立石美津子のオフィシャルページ http://tateishi-mitsuko.com/

 
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<息子に起こった苛め>
 
小学校時代の話である。時々、知能の遅れのある自閉症の息子が「きもいって言われた(笑)」と嬉しそうに言うので「なんだろうな……?」と思ってはいた。数ヶ月経って、隣の学校の副校長から「お詫びをしたいので学校に来てほしい」と連絡があった。どうも朝の登校中、別の小学校(この小学校は特別支援学級が併設されていない学校)の生徒から突かれたり罵倒されたりしている様子を見て通学路の家の人が見るに見かねて通報したらしい。
そして、私は隣の学校に出向いた。「息子さんに嫌な思いをさせて申し訳ありませんでした」と副校長から謝られた。お詫びされてもどうしようもないので、嫌みっぽく「やはり、学校内に特別支援学級がないと異質な者を理解できないんでしょうねえ。特にダウン症とか肢体不自由の場合、見ただけで障害がわかりますが自閉症は顔つきは普通ですからねえ。変に思うんですかねえ。息子が通う小学校では毎日交流しているのでそういうことはなく普通級の子ども達の意識には“知恵遅れのクラスの子どもを助けてやらねば”という気持ちが自然に育っていますよ!」と言ってしまった。
 
副校長は「そうですね。今度、息子さんを連れて学校に遊びに来てください。お友達を作りましょう」と私に言った。私は心の中で「自閉症は友達が欲しくないんだ。この先生、自閉症のこと何にもわかっていないな!」と思い、丁重に「こちらの普通学級の生徒さんには障害の子どもと交わることはよい体験となると思いますが、息子は自閉症です。人と関わること自体がストレスになります。お友達を作りたい気持ちはないので折角ですが・・・伺いません。申し訳ありません」と断った。何て嫌みな親なんだろうと思われたと思うがこれが息子の本心であることが長く育てていて骨身に滲みて私はわかっている。よく「みんな仲良く」なんて保育目標を掲げている幼稚園があるけれども、みんなと仲良く出来ない子どももいると思う。
 
さて、ここで親として救われたと思ったこと。それは息子が幸い知能が低いため苛められている意識がこれぽっちもなかったことだ。「“きもい”いるかなあ?」なんて言っている。“きもい”の意味がわからず、子どもの名前だと勘違いしているようだ。学校に呼び出されるまで気が付かなかった私も私だ。しかし、確かに息子を連れて歩いている時、道で何度も「変なやつたが又来たぜ!」と指を差されたことが頻繁にあった。その度に私はその子ども達を鬼のような形相で追いかけ「今、なんて言った?そういうこと言っていいと思ってんの!自分がやられたらどう感じるのよ! え! 今度やったら二度と許さないからね! わかった! 私を誰だと思ってんの! ただのお母さんじゃあないのよ! 先生なのよ! 返事は! え、聞こえない! もっと大きな声で“はい”と言いな! ほれ!」とどついた。完璧切れている私、感情むき出しの鬼婆と化していた。でも母親だったら目の前で大事な我が子に指を差して「きもい! 変なやつ、頭狂ってる」言われたら、こうなるのは当たり前と思ってほしい。又、怖い親の子と思われた方がターゲットにならない良い面も実際あるのだ。
 
でも、少しAD/HD(注意欠陥多動性障害)傾向があり、考える前に言葉・顔・行動に出してしまうの強い衝動性があるのが私の悪い面。だから、本まで出して偉そうなこと講演会で吠えているが、息子に対しても小さい頃、悪いことをして叱る時、泣かないと頭に来てしまい「何で私がこんなにエキサイトしているのに泣かないんだ!」と切れてしまい、織田信長のように「泣かぬなら泣かしてみせようホトトギス!」の精神で泣くまで叱ることが度々あった。だから、息子を苛めた子ども達に頭にきて、これでもかと言うくらい叱ってやった。結果、相手の子ども達の表情は引きつっていた。涙を出すのも忘れて怖がっていた。
それから「ああ、これで知能指数80くらいあったら本人も苛められていることを感じるし、自分が人とコミュニケーションをとれないことに悩むんだろうなあ、知能低くて本当によかった」とつくづく思った。今、発達障害のアスペルガー症候群の人達の生きにくさがさかんにテレビなどで取り上げられている。自分が人とは少し違う、おかしいとわかって努力してもどうしようもない、ことほど辛いことはないのだ。山田洋次監督の「学校2」で少しだけ知恵遅れの生徒が重度の知恵遅れの子どもに対して「お前はいいよな、自分がバカだってことわからないから」と呟いていた場面を思い出した。実際、アスペルガーの人から「○○(息子の名前)はいいよな。自分がおかしいってわかっていないから。俺もまともな自閉症に生まれたかった。羨ましい。生まれ変わりたい」と会う度に言われる。中途半端なグレーゾーンの子どもが一番辛いと思う事件だった。
 
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義務教育が始まる小学校、すべての学校に知的遅れのある子どもが通う特別支援学級がある訳ではありません。中学になるとその併設校は更に減ります。頭では障害について理解していても、学校生活で休み時間、運動会、交流給食(週に1回ほど支援学級の子どもが普通学級で給食を食べる)、遠足、合宿など交流していなければなかなかその行動や特徴は理解できません。
同じ学校に障害の子どもがいれば自然と手を貸すようになります。運動会の時など勝手な行動をする子にさりげなく何人が手を貸して「こっちだよ」と声をかける姿を見ることがあります。確かに変わった子、ぶつぶつ独り言を言う子、たまに話しかけても会話にならず一方通行で言いたいことを叫んでいる、でもなんとなく、手を貸してやらなくてはいけない友達と特別支援学級が併設されている小学校の健常児は経験上わかっています。たまたまその機会がない場合は親が意識して交流を持たせることが大切です。すると異質なものを排除する気質が自然とつかなくなります。ですから足を引っ張られるなんて思わないで下さい。「障害児の友達がクラスにいることにより伸びる」そんな風に捉えてほしいと思います。
 

写真は息子を気遣う健常児
 

運動会 騎馬戦に参加しているようでしていない子ども
 

■本人告知をせずに友達にカミングアウト! このズレの解消法

子どもが小学生になって周りにその特徴的な行動について伝える場合は更に神経を使わなくてはなりません。幼児のように当人も周りも単純ではないからです。
「本人告知→周りに伝える」の順番が逆になったら大変です。医師でも何でもない友達から「○○君、脳に障害があるんだって」なんて周りから本人に伝わったら大変です。
 
先に本人告知です。出来れば親ではなく、もし主治医がいたらその専門医師から伝えてもらいましょう。但し、精神が安定している時期に伝えるのがポイントです。周囲からの障害に対しての理解がないまま苛められ、鬱・不登校・自傷・他害などの症状が既に出てしまっている状態で「あなたは元々、障害があるのよ」と告知されることはよくありません。それが起こる少し手前の時期「何で自分は友達が出来ないんだろう」「空気が読めないんだろう」と疑問に思い始めている時期に伝えます。すると「自分の努力不足ではなかったんだ」と思いホッとします。小学校4年生くらいで告知するケースが多いようです。
 

■受診の薦め

専門医者でもない友達や保育士・幼稚園の先生が言ってはならない言葉があります。「○○君は発達障害かもしれなから一度、専門の所に連れて行って診てもらったら?」という言葉です。でもこれに近いことを誰かが言ってやらなければその子の幸せな将来はありません。親に子育ての仕方のモードを変えてもらわなくてはならないからです。でもなかなか友達から口火を切ることは難しいです。友達なら相手から「うちの子、ひょっとして怪しいかも、グレーかもしれない……」と相談があったら「そんなに悶々としているんだったら一度専門家に聞いてみたらどうかしら」と言いましょう。保育園・幼稚園の先生だったら立場上、もっと踏み込んで「心配な面があるので一度、専門機関に行ってみて下さい」とはっきりと伝えるべきです。誰しも自分との人間関係を悪くしたくない保身の気持ちが優先で火中の栗を拾いたくはありません。でも、本当にその友達の子、担当している園児の幸せを考えたら誰かが進言しなくてはならないのです。
 

孤立した最悪の結果です(発達障害に孤独の中で悩んだ母殺人事件記事)
 
さあ、障害を一刻も早く見つけ受け入れ、ママ友や子ども達、先生に理解してもらい生きやすい環境を作ってあげましょう。本人に努力させるのではなく周りが協力してあげることが大切です。
 
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立石美津子
1961年 12月大阪市生まれ
聖心女子大学 文学部教育学科・初等教育課程にて幼稚園教諭・小学校教諭免許取得後
石井式国語教育研究会にて故石井勲先生の元、全国の幼稚園・保育園に漢字教育を普及
「漢字はひらがなより易しい」という石井先生の教えにより“障害児教育が教育の基本”“障害時に理解し易い指導法は健常児にも分かり易い”の考えから、佛教大学にて特別支援学校教諭1種免許を取得し、障害児の漢字教育を行う。
平成7年 株式会社パワーキッズを設立。自らも自閉症児(知的障害を伴う自閉症なので発達障害の範疇には入らない)の子育てをしながら、現在、エンピツらんどの指導責任者として3歳から小学校3年生までの健常児・発達障害児の指導法の開発に奮闘中
著書に「小学校に入る前に親がやってはいけない115のこと」「読み書き算数ができる子にするために親がやってはいけない104のこと」(中経出版)がある。
ホームページ http://www.enpitsuland.com/
立石美津子のオフィシャルページ http://tateishi-mitsuko.com/
 
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黄野 いづみママそらディレクター

投稿者プロフィール

株式会社ママそら ディレクター
株式会社LIVLA 取締役
ピープルビヨンド株式会社 取締役
16歳で単身アメリカへ留学。学習院大学に入学・卒業し、その後に再度渡米。テレビ局や日系メディア会社にてインターンとなる。帰国後は出版社で、約10年間、広告営業や企画編集ライターなどに従事するとともに、プロジェクトマネージャー、チームリーダーを経験する。出産を機に独立。
「子どもの輝く未来のために、子どもの心を育み親子でHAPPY に!」をコンセプトに、木製玩具、アートグッズの輸入販売や心を育む遊びの提案を行っている。海外生活の経験を活かし、楽しみながら英語に触れることのできる遊びも紹介。グローバル時代を生きる子どものために、豊かな感性や表現力、発信力、人間力を育むプロジェクトに取り組んでいる。
株式会社ママそらでは創業時からディレクターを務め、複数のプロジェクトの統括やスタッフ管理・育成に携わるとともに、ライター育成も行っている。
HP  http://www.twinklekidsstar.com
Facebookページ https://www.facebook.com/kidsstarjapan

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