あの子を探して「ママ、この映画見て!Vol.11」


 
中1終わりから映画好きになり、洋画・邦画を問わずに映画館通い。

映画もDVDやテレビで過去の名作が簡単に見られる時代になりました。

映画館もフィルムからデジタルへ移行して、どんどん進化していますが、中でも映画で昔から描かれる普遍のものは、「親子の愛」です。

 

推定6,000本観た映画の中から、ママたちに観ていただきたい名作を毎回1本ご紹介します。

ご紹介する映画はDVDレンタルでご覧いただけるものから、選んでいます。

公認映画検定2級・美容室リグレッタ・オーナー/八木勝二
………………………………………………………….
 

11.【あの子を探して】

1999年 中国映画、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント、106分 カラー

監督=張芸謀(チャン・イーモウ)、脚本=施祥生(シー・シアンション)、撮影=侯咏(ホウ・ヨン)

出演=魏敏芝(ウェイ・ミンジ)、高恩満(カオ・エンマン)、張慧科(チャン・ホエクー)、 田正達(チャン・ジェンダ)

 

1999年ヴェネツィア国際映画祭グランプリ受賞作品。

 

(ストーリー)

舞台は中国の農村。水泉小学校のカオ先生が母親の看病のため、一ヶ月間、小学校を離れることになった。代理として村長に連れてこられたのは、13歳の少女、ウェイ・ミンジ。

 

中学校も出ていないミンジに、面接したカオ先生は心許なさを感じるが、子供たちに黒板を書き写させるだけの簡単なことならできるだろうと代理を任せる。報酬は50元。子供を一人も脱落させなければさらに10元。

 

ミンジは、生徒に自習させて教室の外で座っているだけの「授業」を始めるが、うまくいくはずもなく、次々と騒ぎが起こる。 特に生徒のホエクーは、隙を見て抜け出そうとしたり、女の子の日記を盗んで騒いだりといつもミンジを困らせていた。

 

そんなある日、そのホエクーが突然学校にこなくなった。病気になった親の代わりに、町に出稼ぎに行ったという。 脱落者を出すと報酬が減ってしまうと考えたミンジは、何とか連れ戻そうと策を巡らせる。

 

(鑑賞)

*最後にネタばれがあります。ご注意ください。

1987年のデビューから1998年までは、政治色の濃い作品や時代背景に翻弄される人物を描いてきて、中国の映画監督として第一人者になった感のあったチャン・イーモウ監督が、素朴で貧しい田舎の心象風景をつづった本作と「初恋のきた道」「至福のとき」の「幸せ三部作」の1本目です。
 
全員素人役者なんでしょうか?役名と本名が同じなんですよ。ひょっとしたら、テレビ局長や、アナウンサー役の女性は本職の俳優さんなのかもしれません。

 

とにかく素朴です。
都会と田舎の格差を云々する映画ではありません。貧乏な村なんですが、素朴なんです。
代用教員に13歳の中学もろくに出ていない少女という設定から始まるところは驚きましたね。学問を教える大人がいなくて、それでも国の施策としては、学問を義務付ける時代なんでしょうね。
カオ先生が母親の看病のため1ヶ月不在する間に「生徒数を減らさないこと、勉強は教科書を写させるだけでいい」というのもそういう時代背景をさしている感じがします。

 

素人の子供たちが主演、出演ですから、演技なのか地なのかわからないようなテンポで映画は進みます。
小さい描写の中に、中国のその頃を垣間見られます。

村長や先生は偉い、という儒教的教育、思想。チョーク1本も無駄にできない貧しさ。
町へ出るバス代稼ぎのときのみんなの団結と、バス代が計算違いだったときの落胆、小学3年生が出稼ぎに出なければならない世相。

 

淡々としたつづり方なので、ドキュメンタリーのような感覚を覚えてしまいますが、このスタイルが監督チャン・イーモウのしばらくのスタイルになります。

 

街へ出稼ぎに来たものの迷ってしまって、行く先も寝るところも食べるものもないホエクー。食堂で人のいいおばさんに食べ物を恵んでもらって何とか食いつないでいます。

 

苦労の末、村から歩いて都会まで出てきてミンジは、13歳の知恵と残るお金を駆使してなんとかホエクーを探そうと試みます。
尋ね人の張り紙を書くために筆と墨汁を買い全財産はなくなります。徹夜で駅の待合室で書いたものを「そんなの張っても無駄だ」とあっさり、見知らぬ男から言い放たれます。
そこで食い下がるのがミンジのすごいところ。
「じゃどうしたらいいの?」「テレビ局へ行ってみたら?」という無責任な言葉に、純真なミンジは信じ込み、3日間もテレビ局の入り口で、局長と出会えるのを待ちます。食料なし、寝どころなしで。

 

騒がしさのあまり、局長が見つけ、声をかけてくれます。

尋ね人コーナーだと放映料がかかるので、局長は「田舎の学校から子どもの先生が出稼ぎに来た生徒を探しに来た」というニュースにしてくれます。
ここにも立場の高いものの良心というより、点数稼ぎの偽善性とニュース性を作るという打算も見え隠れします。

ついにテレビに出られ、ホエクーのことを訴えるチャンスが訪れますが、全然うまくいえません。泣きながら、「ホエクー、どこにいるの?」と泣き叫ぶので精一杯です。

 

ホエクーがご飯をもらっていた食堂のおばさんがテレビを見ていて、「これあんたのことを探しているんじゃないの?」で、ふたりは出会えます。

 

テレビ局の取材シーンで終わりのシーンを迎えます。

テレビ局の点数稼ぎ的なシーンはあまり強調しませんが、はっきり見られます。村長もそういう偽善的態度です。


 

ラストシーンでの、全国の寄付で集まったチョークで黒板に生徒が一文字ずつ書くシーン。ホエクーだけ、「3文字書いていい?」と聴きます。

そして書いた文字は・・・
「魏老師」(=ウェイ先生)だったのです。

ネタばれでごめんなさい。
 
この映画で、中国のほんとの姿を垣間見ました。素朴ですが儒教的な生活観念が田舎ではまだまだあるんだなと感じます。
でもそれがチャン・イーモウ監督のよさであり、描きたい要素のようです。
 
 



☆八木 勝二
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