二十四の瞳「ママ、この映画見て!Vol.6」 


 
中1終わりから映画好きになり、洋画・邦画を問わずに映画館通い。

映画もDVDやテレビで過去の名作が簡単に見られる時代になりました。

映画館もフィルムからデジタルへ移行して、どんどん進化していますが、中でも映画で昔から描かれる普遍のものは、「親子の愛」です。

 

推定6,000本観た映画の中から、ママたちに観ていただきたい名作を毎回1本ご紹介します。

ご紹介する映画はDVDレンタルでご覧いただけるものから、選んでいます。

公認映画検定2級・美容室リグレッタ・オーナー/八木勝二
………………………………………………………….
 

6.【二十四の瞳】

 

1954年松竹映画・日本映画ベストテン1位、156分 モノクロ

監督・脚本=木下恵介、原作=壺井栄、撮影=楠田浩之、音楽=木下忠司、

出演=高峰秀子、月丘夢路、井川邦子、小林トシ子、田村高廣、笠智衆、夏川静江

 

(ストーリー)

1928年(昭和3年)、大石先生は新任の女教師として小豆島の岬の分教場に赴任する。一年生12人の子供たちの受け持ちとなり、田舎の古い慣習に苦労しながらも、良い先生になろうとする大石先生。
ある日、大石先生は子供のいたずらによる落とし穴に落ちてアキレス腱を断裂、長期間学校を休んでしまうが、先生に会いたい一心の子供たちは遠い道のりを泣きながら見舞いに来てくれる。

 
しばらくして、大石先生は本校に転勤する。その頃から、軍国主義の色濃くなり、不況も厳しくなって、登校を続けられない子供も出てくる。やがて、結婚した先生は軍国教育はいやだと退職してしまう。

 
戦争が始まり、男の子の半数は戦死し、大石先生の夫も戦死してしまう。また、母親と末娘も相次いで世を去る。
長かった苦しい戦争も終わり、大石先生はまた分教場に戻り教鞭を取ることになる。教え子の中にはかつての教え子の子供もいた。

 

そんな時、かつての教え子たちの同窓会が開かれる。その席で、戦争で失明した磯吉は一年生のときの記念写真を指差しながら(オリジナル版では指差す位置がずれ、涙を誘う)全員の位置を示す。真新しい自転車を贈られ、大石先生は胸が一杯になり、涙が溢れてきた。その自転車に乗って大石先生は分教場に向かう。

 

(鑑賞)

原作は多くの方が知っている物語ですが、全部読んで、実は反戦を高らかに謳いあげた名作小説だということをご存じない方も案外多いのかもしれません。

前半の先生と12人の子どもたちのふれあいのみずみずしさ、そして子どもたちの悪戯で大石先生が怪我をして、自宅療養している先生をみんなが歩いて見舞いに行くシーンの感動、そうしたところがとても印象に残る映画です。

同年に公開された「七人の侍」を抑えて昭和29年の年間ベストテンで1位になった作品です。世紀の名作に迫る名作なのです。

 

まず、分教場の教室で新入生12人の出席を取るところから感動します。

大石先生は、生徒の名前を覚えるために「○○なだれそれ、ニックネームは△△」と書いて覚えようとするものですから、洋服で自転車に乗る女の先生というだけで目立っていたのが、一気に岬の分校の親たちの井戸端会議の餌食になってしまいます。

 

それでも生徒たちは正直です。

男先生がしてくれない授業で先生になついてしまい、小豆島の自然の中でのびのびと育っていきます。大石先生が大怪我をする浜辺の落とし穴の悪戯も悪意からではなく、驚かせてやろうという程度の気持ちでやったことが、大事故につながってしまうのです。

 

昭和初頭の風俗がほんとに丁寧によく描かれています。

岬の分教場から大石先生の家は見えるのですが、湾がぐるりと取り囲んでいますから、約8キロの道のりがあるのです。原作には「瀬戸内の寒村」とだけ記されていますが、作者の壺井栄さんが小豆島出身であったことと、この映画の舞台が具体的に小豆島とうたったことから実話のように思われてきました。

先生を慕って歩き通した12人は先生と久しぶりに再会して、うどんをご馳走になって、それから記念写真を撮って岬へ帰ります。その時の写真がこれなんです。

 

このあと、みんなが高学年になって本校へ通いだしてから起こる時代の影を丁寧に描写し、一つ一つのエピソードが心に残るものになっています。原作にはない童謡をたくさん子どもたちの声で歌わせたのにも、映画としての効果は大きかったと思います。

ユリの花のお弁当の事件、修学旅行の時のぶかぶかの靴の話、船の上での婚約者とのすれちがい、金比羅山の参詣を終えた後のうどん屋でのドラマ、いろんなエピソードがひとつずつ独立して思い出されます。この丁寧さが木下監督の真骨頂なのです。

 

時代は戦争へと突入し、小豆島にも戦争の影響は起こります。生徒たちは兵隊さんになりたいといい、大石先生の子どもたちも家で兵隊さんごっこをして遊んで、叱られてしまいます。

「二十四の瞳」の12人の生徒たちは、戦争後集まったときに、7人にまで減っていたのです。戦争で亡くなった男子生徒、病気などで亡くなった女子生徒が5人と、半分近くが亡くなりました。大石先生の旦那さんも亡くなります。とても悲しいシーンです。

 

こういうシーンを見るに付け、静かに反戦を描いた名作だといえます。

ラスト近く大石先生の教員復帰祝いに集まった7人の生徒からのプレゼントが、真新しい自転車でした。そして、戦争で盲目になってしまった竹一が、みんなで撮ったあの写真を指でなぞりながら、一人ひとりの位置を当てていきます。少しずつずれてはいますが、全員の位置関係は記憶に正しいのです。

ラストシーンはまだやや続きます。この感動的な再会のシーンを終えた後、大石先生がまた岬の分教場へ新品の自転車で通うところが、長く映し出されます。このシーンから人生の日々は臨むと望まざるにかかわらず、続いていくんだという残酷さと希望を示唆して「終」マークがでます。ここが一番のほかのリメイク作品との違いですね。

古くてモノクロで、と敬遠していたあなた、2時間半だけ時間を下さい。レンタルでこの名作が見られるなんて本当に素晴らしいことです。

 
 



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