日本の音楽、古典の魅力~小鼓とは?~
- 2013/4/15
- 暮らし/趣味
公益社団法人 能楽協会正会員 能楽師 小鼓方
森澤勇司
みなさん、はじめまして! 能楽師小鼓方の森澤勇司です。
能楽の舞台で小鼓を演奏しています。
明治からの音楽教育の改変で日本の音楽に触れる機会は少なくなってしまいましたが、
日本の音楽に触れることは非常に大切なことだと考えています。
そこで私のコラムでは、母から子に語って伝えたい能楽や
古典にまつわるお話をお送りいたします。
専門的なことではなく親子のコミュニケーションに役立つものを選んでご紹介します。
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小鼓ってどんな楽器?
小鼓とは、桜の木の胴に馬の皮をはった楽器です。よく革が破れたら取り替えるのかと聞かれます。この革は一節には舞台で使うまでに3代かけて育てると言われているほどなので、壊れたりしないように丁寧にあつかいます。
この形のまましまっておくのではなく、舞台や稽古で使用するときに組んで使用する、いわばコンポーネント楽器です。普段は仕覆(外側の袋)にいれてしまってあります。
実際に舞台で使用するものは室町から江戸期にできたものが多いようです。胴にも蒔絵が施され内側も磨き上げられている美術品です。外側の蒔絵もシンプルなものから豪華なものまで様々です。舞台から見えないところまで非常に細かく作りこんであります。こういうところにも日本人のものづくりや細部までこだわって作りこむ姿勢が感じられます。小さい頃からこういう日本の芸術品にふれると、ものを大切にする心や最後までやりぬく感覚が身につくのではないかと思っています。
音に対する赤ちゃんの反応
ここで面白いお話があります。私は「伝統文化子ども教室」「キッズ伝統芸能」などで小鼓の音をお伝えして来ました。その中で不思議だと思うことがあります。赤ちゃんや小学校低学年までのお子さんは本物に反応するんです。本物の革の小鼓は高価なものなのでワークショップや体験講座にはプラスチックの小鼓を使用します。ただし必ず本物にも触れていただきます。この時の反応は本当に興味深いものです。実際に舞台で使う350年ほど前の小鼓を持っていった際も、プラスチックにはあまり関心を示さず、古い小鼓を出すとグーッと寄ってくるのです。
本物の革でできた小鼓は正しい型で打たなければなりませんが、プラスチックのものは比較的らくに音が出せます。それでも音が出なくても革の鼓を打ちたがるお子さんが大半です。実際に音を出してみると、プラスチックの小鼓の音では泣き止まなかった赤ちゃんも、革の鼓を打つとピタリと泣き止むことが多く、参加しているママたちも結構びっくりします。
おとなになると、「音が出る方」「簡単に鳴る方」という基準で選んでしまいがちです。お子さんの中でも「どうすればなるの??」という「やり方」に関する質問をするようになった子に成績を聞くとたいてい上位に入っています。私は、「ものに左右されない体の使い方」「やり方」に意識を向けることを重視しています。それに加え小鼓は左右の手のバランスや自分の体の調和に意識が向くことで初めてから成績が上がることも少なくありません。
小鼓の音は幼い頃から馴染みのあるあの音!
小鼓は「ポッ ポッ 」となる音だけ聞いても和を感じる楽器です。楽器そのものは見たことはなくても、音は聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。実際に楽器に触ったことがなくても多くの人が知らず知らずのうちに、この音を子どもの時から口ずさんでいます。それは“鼓草”と呼ばれる「タンポポ」なんです。小鼓の音は「チ、タ、プ、ポ、ツ」という5種類の音と掛け声の組み合わせによってできています。タンポポの語源は小鼓の「タ、ポポ」という音に由来する説があります。
実はそのほかにも、タンポポの茎は切り取って両端に切れ目を入れるとくるくると丸まって鼓のような形になるため鼓草という説もあります。
タンポポの語源はこのように諸説ありますが、こういう話をすると「どれが本当だ」と議論が始まることがあります。でも、そこは「あーそういうお話もあるんだな。面白いな~。」と思えることが大切ですね。むしろ、いろいろな説があるというは興味深いことだと思いませんか? 自分の意見を持ちつつも相手の考え方も認め「いいね!」と思えることが和という事なんだと私は思います。
まずは能楽の雰囲気を味わってみましょう
能楽があまり身近ではないという方も多いと思いますので、ここにご紹介します。これは実際の能楽「翁(おきな)」の「三番叟(三番三)」さんばそうの部分の一番初めに小鼓が打ち出す音「タ、ポポ」そのままです。こちらは、お正月のはじめに能楽堂で必ず上演されますものです。豊作を祈る曲を聞いて運気を上げるのはいかがでしょうか。
まずはどのようなものなのか動画で雰囲気を感じてみてくださいね。
↓youtubeの三番叟の動画です。
[youtube]https://www.youtube.com/watch?v=aZDgfm88unE[/youtube]
第2回目は、能楽の伝書「風姿花伝」を題材に、年齢に応じた学びのコツをお話したいと思います。
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【森澤勇司】
公益社団法人 能楽協会正会員 能楽師 小鼓方
・1967年 東京都世田谷区生まれ。父は会社員、実家は商店経営という家庭環境で育つ。
・幼少期、外で遊ばせてもらえない環境だったので家にある本を読み空想を広げることを楽しみに育つ。いうことを聞かないと火箸で手を焼かれるような家庭環境で育つ。
・子どもの頃から、柔道、アメリカンフットボール、ギターなどを学んでいたが、高校卒業時に見た日本のミュージカルで「日本人には日本のものがよい」という思いをもち日本らしい仕事につくことを決意。「能楽」に興味を抱く。
・3年に1度の国立能楽堂養成事業2期生募集にであい思い立って3か月後には見たこともない能楽の修行に入る。
・平成11年独立「森澤勇司独立記念能」は高円宮憲仁親王も鑑賞。終演後「よい舞台でした」とお言葉を賜る。
・2010年「楊貴妃」出演中に脳梗塞のため集中治療室に入る。
・リハビリのために受講したアクティブブレインセミナーに感銘を受け講師資格取得。
・その後、コーチング、マーケティングなどを学ぶ中で海外自己啓発セミナーは「風姿花伝」「五輪書」など明治以前に日本で語られている教育法とほぼ同じだということを発見する。
・現在、能楽舞台への出演、小鼓の稽古、販売、日本の文化に関するセミナー、講演などを行っている。
森澤勇司WEBSITE
http://www.nohgaku.com/
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