子どもに英語を話せるようになって欲しい、と願う親御さんは多いでしょう。
でも、どのように育てたら、英語が身につくのでしょうか。またそもそも、英語をそんなに小さい頃からやる必要があるのでしょうか。
簡単に答えが出せるような単純な問題ではないからこそ、お子さんのためにより良い選択をしていただけるように、ぜひ知っておいていただきたいことを5回シリーズでお伝えします。
【英語のコンサルタント兼カウンセラー 西澤ロイ】 プロフィール
英検4級からTOEIC満点(990点)まで上達した経験に、言語学・心理学・脳科学など加え、努力に見合った結果が出る英語学習法を伝える専門家。
ベネッセ「こどもちゃれんじ ほっぷEnglish(おうちのかた向けブック)」に3年連続掲載、日経ムック「デュケレvol19.小学生の英語事情」に掲載。「日経WOMAN」「プレジデント」などの雑誌・ラジオなどメディア出演多数。
「内容が伴っていない」英語
こんにちは、西澤ロイです。
私は大学でたくさんの帰国子女を見てきました。最初は彼らを見ていて、非常にうらやましかったです。彼らの英語はまるでネイティブ。受験英語で学んできた私は、彼らの英語に全くついて行けなかったからです。
しかし、1年、2年と彼らと付き合いを深めるうちに、ちょっと違う見方ができるようになりました。
なぜなら、彼らの話す英語が聞き取れるようになってくると、実は「内容が伴っていない」ことが多々あるのに気づいてきたからです。
そして「ベビーイングリッシュ」「セミリンガル」という2つの言葉を知りました。
「ベビーイングリッシュ」とは、子どもの時に海外生活をして日本に帰国。大人になっても英語が子どもレベルのままであること。(実は英語力を維持するのも難しいことです。すっかり忘れてしまい、しゃべれない人も少なくありません。)
「セミリンガル」は、セミ(semi-)が「半」を表しますので、2つの言語がどちらも中途半端であり、満足に使いこなせる言語がない人のことを指します。
最初は、ネイティブのような発音で、流暢な英語でまくし立てる帰国子女たちが「ものすごくできる人」に見えました。でもそれは、隣の芝生が青く見えるのと同じで、表面的な見方に過ぎなかったのです。
もちろん中にはものすごく英語ができる帰国子女もいました。しかし彼らは、その英語力を手に入れた代わりに、例えば
・日本語が怪しかったり
・日本の歴史を全然知らなかったり
・自己主張の強さが日本人離れしていていたり
・アイデンティティがもはや「日本人」ではなかったり
と様々だったのです。
「意識して選ぶ」こと
私たちはつい「英語ができたらいいな」とプラスの面ばかりを考えてしまいがちです。
しかし子どもは、単なる「スキル」として英語を身につけるのではありません。脳の発達も同時に起こるため、英語をやるということは、その代わりにやらなくなることが生まれ、何か(の発達)を捨てることになります。その例が上記のような代償(?)なのです。
全ての物事には表と裏があります。ですから、単純に「英語を身につけさせよう」と考えてしまうのではなく、それによって生まれるマイナスがあるかもしれないということをぜひ知っておいて下さい。
もちろん、英語を身につけないことの方がマイナスかもしれませんし、何がプラスで何がマイナスかは判断が非常に難しいところです。
例えば、「日本人」として育てたければ、自己主張が強すぎるのは問題かもしれませんし、逆に「地球人」として育てたければ、そのくらいの態度が欠かせないかもしれません。
結局、大切なのは「意識して選ぶ」ことです。
「周りがやっているから」という理由で英語を学ばせた結果、日本語が怪しくなってしまい、英語もうまく身につかなかった・・・そんな望まないマイナスが生まれてしまったら悲劇ですよね。
ですから「選ぶ」ために参考となる基礎知識をこの連載でお伝えさせていただきます。
次回は「英語に触れるのは早い方がよいのか?」です。
■西澤ロイ(英語のコンサルタント兼カウンセラー)
http://stress-free-english.net/
■世界一聞きたい英会話の授業
http://englishpower.net/conversation/seminar.html
著書
『頑張らない英文法』(あさ出版)