4.グレーゾーンの子どもを理解しよう! ~成人の発達障害の人~



株式会社パワーキッズ取締役

「エンピツらんど」創業者
立石美津子
はじめまして、立石美津子です。
18年前、株式会社パワーキッズを創業しました。幼稚園・小学校向け課外教室《エンピツらんど》を運営しています。全国280ヶ所の幼稚園・保育園に教室があり現在7000名の生徒が通っています。
 
私自身、自閉症児の子育てをしながら、現在、3歳から小学校3年生までの健常児・発達障害児の指導法の開発に奮闘中です。
 
つい先日、作家デビューし著書に「小学校に入る前に親がやってはいけない115のこと」「読み書き算数ができる子にするために親がやってはいけない104のこと」(中経出版)があります。AKBを抜いて一瞬、第一位で累計3万部売れました。こちらも是非、ご覧ください。
今週のコラムでは、発達障害についてお話させていただきます。
 
 
…………………………………………………………………

4.成人の発達障害の人

 
発達障害とは全人口の6%いや10%はいると言われます。よく幼児期・学齢期などの行動が問題視されますが、その子ども達も確実に歳を重ねて大人になっているということです。ADHD(注意欠陥多動性障害)の子どもは多動・衝動性などが問題視されますが、大人になってウロウロバタバタするこの状態は影を潜め、代わりに忘れ物の多さ、片付けられないといった形で目にすることが多くなります。子どもの頃、会話が出来ない、言葉が遅い子どもが大人になってからは、喋っていても相手の気持ちが読めないため会話が一方通行になります。例えば相手がつまらなそうな顔をしているのに自分の興味ある話を一方的にし続けるなどです。
 
4回目は幼児期に早期発見そして早期支援をしなかったために大人になって苦しんでいるケースを具体的に紹介していきたいと思います。この苦しんでいる状態を二次障害と言います。
 

■二次障害とは

元々生まれつきあった一次的な障害への適切な対応を行なかったために現れた “情緒的にこじれた状態” を差します。 早い子どもで小学校時代から、多くは思春期から出現します。 又、知的障害がある場合は親が障害を受け入れざるを得ない状況になり、その子にあった子育てをするので二次障害は起こらないと言われています。二次障害はグレーゾーンの子ども達に起こるものです。
 
二次障害とは
●不登校・引きこもり
●鬱などの精神疾患
●リストカット(自傷)・自殺
●チック・吃音(どもり)
●抜毛癖(ばつもうへき)
●他害・反社会的行動(犯罪)
 

■こじらせているケース

私の知っている人の例です。
 
<例1>
お母さん自身がアスペルガー症候群でした。公園にコーラ飴を持ってきて「うちはこういう毒々しい添加物入っているお菓子与えていないんで皆で食べて」と配っていました。皆、ドン引きです。彼女には悪意はありません。ある意味正直です。でも声に出していいことと悪いことがあることを理解していません。
 
<例2>
アスペルガー症候群の営業社員。訪問先の人が遠回しに断りの顔つき、声のトーンで「検討しておきます」と言っているのに字義通り受けとります。「検討してくれるんだ」とウェルカムに捉え、何度も何度もしつこく商品を売りに行き、相手を怒らせてしまいました。
 
<例3>
知り合いからの年賀状に「お近くにお寄りの際は是非お越しください」と書かれていました。3日後に連絡もしないで訪問しました。突然現れた来客に相手はびっくりした様子です。本人は単に「“近くに寄ったら起こし下さい”と書いてあったから素直に来たのに何で嫌がられるのだろう」と混乱しています。社交辞令がわからないのです。
 
<例4>
ある進学校での風景。先生が「胸に手を当てて考えてみろ」と言われ実際に胸に手を当てて担任の神経を逆なでしているアスペルガー症候群の生徒がいました。比喩がわからないのです。
 
これらはアスペルガーの社会的知性の低さを示しています。言っていることはどれも間違いではありませんが、口に出していいかどうか、その場の状況を的確に判断できないのです。不適応の例です。そして、これが毎日続くと友達は出来ません。本人も家族も友達も学校の先生も障害については認識していませんので「あいつ気に食わない」「何だか交われない」と友達も出来ず本人も悩んでいます。苛めに発展するケースも少なくはないです。

 

■生きる術を教えて行く

生きる技を小さい頃から教えて行く必要があります。
これは表情を療育施設で使われている顔で人の心を読みとる訓練のボードです。
 

 
健常の子どもはこういったことはあえて教えなくても自然に理解出来ます。しかし、自閉症スペクトラムの子どもはわかりません。これは発達障害であるかどうか診断する「サリーとアン」のテストです。
 
実験絵(サリーアン絵)
 

これはサリーです。これはアンです。サリーは籠を持っています。アンは箱を持っています。
 

サリーはビー玉を持っています。サリーはビー玉を自分の籠に入れました。
 

サリーは外に散歩に出かけました。
 

アンはサリーのビー玉を籠から取り出すと、自分の箱に入れました。
 

さて、サリー帰ってきました。サリーは自分のビー玉で遊びたいと思いました。サリーがビー玉を探すのはどこでしょう。
 
多くの場合、4,5歳程度になると正解である「籠の中」と答えることができます。しかし、自閉症の子どもは「箱」と答えます。他者が自分とは違う見解を持っていることを想像するのが難しいために、自分が知っている事実をそのまま答えてしまうのです。コミュニケーションというのは、表面的な言葉のやりとりではなく、相手との親密度、視線、表情、身振り手振り、抑揚といった非言語的手段を用いた上に成り立つものです。自閉症の人は相手からこれらを受信したり自分から発信したりすることがとても苦手です。
 

■育ちの良い障害児に

アスペルガー症候群の子どもを持つ先輩ママから言われたことです。そのお母さんはずっと「障害は個性だ。努力次第で何とかなる」というポリシーで子どもを育てていました。しかし結果こじらせてしまったパターンでした。その時、私の子どもはまだ2歳でした。「立石さん、そんなに早く障害がわかったならば、うちのようにこじらせては駄目よ、育ちのいい障害児に育ててね」と言われました。衝撃であると同時に深い言葉でした。実際に障害は軽くても、それに対しての配慮・支援がされてこなかったため陰湿な苛めなどにあい、思春期以降、二次障害に苦しみ、自己否定のよるリストカットが収まらず病院に入院させている友達のお母さんも多くいました。
「育ちが良い」というのは品があるとか教養があるとか学歴があるということではないです。ちゃんと親が認めて受け入れ、障害に合った子育てに切り替えよという意味です。
 

■本人告知を通してスポーツ、職業選択も明確に

選んではならないクラブ活動・スポーツなどがあります。チームを組んで行うものなどです。野球やサッカーは向いていません。代わりにテニス、卓球、ゴルフなど個人プレイが適しています。本人がやりたいものと向いているものが違います。本人告知をしていればそこで説得も出来ます。
 
更に職業選択をする時もなりたいものと適している仕事は異なります。ざっと挙げるとこんな感じです。
 
向いている職業……対人スキルの要らないもの
○研究者
○技術者
○調理師
○音楽家・イラストレーターなどの芸術家
○ピアノの調律師
○カメラマン・記者
○建築家
○検査技師
○整備士
 
向かない職業 ……対人スキルや管理能力を必要とするもの
×営業
×サービス業(接客業・教師も含む)
×経理・人事・総務
×運転手・パイロット
 
今日の具体的な例を通して育ちのよい発達障害児に育てて行きましょう。見て見ぬ振りをしている取り返しのつかない事態になります。
 

 
親が気づかない・認めない代償はあまりにも大きいです。幼児期からの周りの大人の関わり方により本来回避できたものなのです。元々あった一次障害に加えて思春期以降、お子さんが二次障害で苦しむことのないようにしてほしいです。
 
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立石美津子
1961年 12月大阪市生まれ
聖心女子大学 文学部教育学科・初等教育課程にて幼稚園教諭・小学校教諭免許取得後
石井式国語教育研究会にて故石井勲先生の元、全国の幼稚園・保育園に漢字教育を普及
「漢字はひらがなより易しい」という石井先生の教えにより“障害児教育が教育の基本”“障害時に理解し易い指導法は健常児にも分かり易い”の考えから、佛教大学にて特別支援学校教諭1種免許を取得し、障害児の漢字教育を行う。
平成7年 株式会社パワーキッズを設立。自らも自閉症児(知的障害を伴う自閉症なので発達障害の範疇には入らない)の子育てをしながら、現在、エンピツらんどの指導責任者として3歳から小学校3年生までの健常児・発達障害児の指導法の開発に奮闘中
著書に「小学校に入る前に親がやってはいけない115のこと」「読み書き算数ができる子にするために親がやってはいけない104のこと」(中経出版)がある。
ホームページ http://www.enpitsuland.com/
立石美津子のオフィシャルページ http://tateishi-mitsuko.com/
 
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黄野 いづみママそらディレクター

投稿者プロフィール

株式会社ママそら ディレクター
株式会社LIVLA 取締役
ピープルビヨンド株式会社 取締役
16歳で単身アメリカへ留学。学習院大学に入学・卒業し、その後に再度渡米。テレビ局や日系メディア会社にてインターンとなる。帰国後は出版社で、約10年間、広告営業や企画編集ライターなどに従事するとともに、プロジェクトマネージャー、チームリーダーを経験する。出産を機に独立。
「子どもの輝く未来のために、子どもの心を育み親子でHAPPY に!」をコンセプトに、木製玩具、アートグッズの輸入販売や心を育む遊びの提案を行っている。海外生活の経験を活かし、楽しみながら英語に触れることのできる遊びも紹介。グローバル時代を生きる子どものために、豊かな感性や表現力、発信力、人間力を育むプロジェクトに取り組んでいる。
株式会社ママそらでは創業時からディレクターを務め、複数のプロジェクトの統括やスタッフ管理・育成に携わるとともに、ライター育成も行っている。
HP  http://www.twinklekidsstar.com
Facebookページ https://www.facebook.com/kidsstarjapan

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