2.グレーゾーンの子どもを理解しよう! ~育てにくい子どもの育て方~



株式会社パワーキッズ取締役

「エンピツらんど」創業者
立石美津子
 
はじめまして、立石美津子です。 18年前、株式会社パワーキッズを創業しました。幼稚園・小学校向け課外教室《エンピツらんど》を運営しています。全国280ヶ所の幼稚園・保育園に教室があり現在7000名の生徒が通っています。
 
私自身、自閉症児の子育てをしながら、現在、3歳から小学校3年生までの健常児・発達障害児の指導法の開発に奮闘中です。
 
つい先日、作家デビューし著書に「小学校に入る前に親がやってはいけない115のこと」「読み書き算数ができる子にするために親がやってはいけない104のこと」(中経出版)があります。AKBを抜いて一瞬、第一位で累計3万部売れました。こちらも是非、ご覧ください。 今週のコラムでは、発達障害についてお話させていただきます。
 
 
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2.育てにくい子ども・育て方のコツあれこれ

 


 
・絵本の読み聞かせの時、じっとしておられず後ろソファーで遊んでいます
・発表会の時、端で棒状の物を持って遊んでいます
息子の昔の写真です。とても育てにくい子どもでした。
 
育てにくい子どもへの接し方。その特徴に合わせた対応を幾つか紹介しましょう。
 
お子さんが診断を受けた受けないに関わらず次のような工夫をしてみてください。何故なら“障害児にわかりやすい指示は健常児にもわかりやすいから”です。保育園・幼稚園・小学校の先生の授業が面白くなく退屈なため、つまり指導力がないため長く座っていることが出来ずにウロウロ立ち歩く子どもがいたとしましょう。この子はある意味感度の高い子どもです。元々落ち着きのある子どもはどんなつまらない指導でも定位置に座って我慢して聞いていることが出来ます。又、性格的に相手に気遣いするような子どもは「先生に悪いから、気の毒だから」と静かに座っていることもできます。学級崩壊しているクラスでも静かに授業を聞こうとしている子どもが必ず3~4人はいます。しかし、これらの大人しい子、お利口な子どもにとっても同様につまらない筈です。ですから診断・未診断に関わらず次を試してみましょう。
 
(1)見える物がわかりやすい(視覚優位)
人間は目からの情報が一番印象に残ると言われています。更に目と耳両方を使うと記憶がアップすると言われます。ですから学校の授業で先生が大事なポイントを板書したり、会社でプレゼンするときパワーポイントを駆使したりします。特に発達障害児の場合はそれが顕著です。耳からだけの情報を捉えるのが不得意です。
 
○水を流すのに強い興味を持っている子ども。「トイレの水を流すのは1回だけにしなさい」と何度も口で言うより「トイレの水は1回に」と貼った方が効果的です。でも、これが読めなくては意味が伝わりませんから、最初は何度かそれを指さして声に出して読んでやります。読めるようになったら貼ったままでよいでしょう。
 


 
○触ってはならない食器棚。「触ってはダメ!」と口喧しく言っても“馬の耳に念仏”状態注意は左耳から右耳へ抜けてしまっています。触ってはならない場所に×印をしておきましょう。
 

 
○やってはならないことをした時はこのように指で×印をして視覚的に見せましょう。
 


 
○「片付けなさい」と耳だけに訴えるのではなく物の指定席を写真で貼りわかりやすくしておきます。
 
(2) 変化に対して不安がある(同一保持性)
出来るだけ環境は変えないようにしましょう。しかし、そうもいかない時があります。そんな時はいきなりではなく、あらかじめ伝えておきましょう。見通しを立ててやるのです。
 

 
○予定変更は早めに写真や文字で見せておきましょう
 
○毎回違う道ではなく同じ道を通って帰りましょう
 
○「注射は嫌だろうな」と思い、突然、小児科に連れてきて予防接種。注射の痛みより予期せぬ出来ごとに混乱してパニックを起こします。注射の場合も前もって伝えておきましょう。カレンダーに○印をして予告しておきましょう。
 
(3)短い集中力
子どもの集中力は短いものです。発達障害児の場合は特にこれが顕著です。ですから次の工夫をしましょう。
 
○宿題やプリント、一度にどっさりと与えるのではなく夕飯前と風呂の後に分けるなど長時間取り組まなくてもよい工夫をしましょう。
 
○学校に休み時間があるように小休止を入れましょう。背伸びしたり少し走ったりして気持ちの切り替えが出来るようにしましょう。
 
○「食器を下げる係」「プリントを配る係」をさせるなど立ち歩くことで注意を受けるのではなく特性に合った役割を与え、褒め認められる機会を多くしましょう。
 
(4)情報が同時に入ってくる
通常、喫茶店で友人と喋っている時、隣の席にいる他人の会話はある程度シャットアウトし目の前の友達の声を拾うことができます。けれども発達障害児は自分に必要な音を選択出来ません。脳のフィルター機能が働かず全ての刺激が一斉に入ってきます。先生の声だけ選択できず窓の外で音がしたら気になってしまいます。そばに行って再度、声をかけるなどの工夫をしましょう。
 
○全体に話していることが自分にも言われていると理解していないことがあります。全体に「トイレに行きましょう」と話すだけではなく「たかし君トイレに行って下さい」と個別に再度話をしましょう。通訳している感じで再度伝えます。
 
(5)同時に複数の指示を出さない
同時に複数のことを言われても処理できません。1つずつ伝え、できたら次やることを示しましょう。
 
○「服を脱いだら、うがいをして、手を洗って冷蔵庫から牛乳を出してコップに入れて」これは同時に5つのことを指示しています。これを1つ1つばらばらにして1つできたら次のことを指示するようにしましょう。
 
○黒板に板書する時、注目してもらいたい箇所を○で囲んだり、不必要な情報を隠すようにしましょう。黒板に余計な掲示物をはったままにしないようにしましょう。
どちらが集中できますか?
 


 
(6)褒める
皆と同じようにできない子ども。一斉指導の幼稚園・学校では注意されたり叱られる経験が多くなっています。家庭でも親がよくわかっていないと、同様の対応を365日年中無休でされています。自己肯定感が育たず「自分は駄目な人間だ」と刷り込まれてしまい、成功体験がないためあと後、これが大きな問題となります。
ですから叱ることはあってもそれ以上に褒め、認めましょう。“脳は成功体験を通してしかやる気を起こさない臓器”だからです。
 
○忘れ物を頻繁にして叱られる体験を毎日するくらいなら、同じもので「学校用」と「家庭用」の2セットを用意した方がよいという考えもあります。
 
○間違った文字は赤で直さず、できている文字だけ褒めます。
 

 
○片付けていない時は特に何も言わず、整理整頓している時に褒めます。
 
○「授業中、騒ぐ」「勉強ができない」「忘れ物をする」など大人から見たら褒めることなんか何にもないかもしれません。でも褒めることなんか探せばいくらでも探せばあります。「雨なのに幼稚園に嫌がらずに行った」「鉛筆が筆箱に入っている」「風呂に入って一人で洗えた」何でも褒めます。否定的な言葉をかけ続けることによる成長はありません。
 
○文章題が苦手ならば得意な計算問題を主にやらせましょう。成功体験を積んだ脳にはエンジンがかかり苦手な文章題にチャレンジする気持ちが起こります。あまりにも文章を読むのが苦手ならばいっそ文章題はやらせない、こんな勇気ある選択も大切です。
 
(7)曖昧な伝え方をしない
見通しを立てることが不得意な子ども。これは想像力も乏しいことです。ですから曖昧な指示は伝わりません。同じことを伝えるのにも次のように言うと理解します。
 
×もう少しだけ待っていなさい。
○あと、3分待っていなさい。 ……時間がわからなければ砂時計で見せる。
 
×そろそろブランコ替りなさい。
○あと3回こいだら交代しなさい。
 
×さあ、林檎に似た色の鉛筆どれ?
○赤い鉛筆取って、赤い鉛筆 ……一言で明確に指示する。
 
×お風呂のお湯見てきて。
○お風呂のお湯あふれていたら 止めてきて下さい。
 
×電話で「お母さんはいますか?」→います。
○「お母さんは今そばにいますか? いたら電話を替って下さい。」
 
×「~しない方がいいと思うよ」「 なるべく」などの曖昧な指示
○「~してはいけない!」とはっきりと伝える。
 
×もうすぐ太郎君にも言わせてあげるから、待っていなさい!
○花子ちゃん・たかし君→太郎君の番です。
 
×おもちゃをきちんと片付けましょう。
○おもちゃをおもちゃ箱に入れましょう。……*ものの指定席を決める。引き出しなどにその写真を貼る。
 
×太郎君!順番を守りなさい!
○太郎君は花子ちゃんの次よ。
 
×お弁当の準備をしなさい。
○お弁当箱・箸・ナフキン・コップを正しく置いた写真を見せる。
 

 
×丁度よい長さに切って下さい。
○5㎝ずつに切って下さい。
 
×教室を綺麗にしましょう。
○机の上にあるものと床の上にあるものを 元の場所に戻す。→ほうきで掃く→雑巾で本棚と机を拭く。
 
(8)感覚過敏を理解する
水が好き、粘土が触れない、偏食である、特定の音に耐えられない、特定の感触の服し着られないなど大なり小なり感覚過敏があります。息子の場合はモーター音、食洗機の音、掃除機や洗濯機の音、特に公衆トイレのエアタオルの音がダメでした。これを克服させようとしてはなりません。息子の場合は某療育施設の方針でこれに慣れさせるため無理やり手をエアタオルの下に持って行く訓練を受けていました。これが逆効果となりその療育施設に入ることさえできなくなってしまいました。
もし、あなたが人が使った湿った臭いスリッパを絶対に履けないという感覚を持っていたとしましょう。それに慣れようと臭いスリッパを何度履いても慣れるものではないでしょう。だからできるだけそれを避け、精神的に安定出来る環境を親は与えなくてはなりません。私の場合は主治医の指示により外出の際、エアタオルのない地図を作り外出していました。こんな感じです。
 
●井の頭線の駅にはエアタオルがない。
●○○駅 綺麗なトイレだがない。
●○○デパート  全部設置
●デニーズ ○○店  あるが一人用のトイレなので、目の前で他人が使うことはない
●まぐろ人 デニーズと同様
●ジョナサン○○店 複数トイレに一個設置
●○○駅構内トイレ  汚い古いトイレ もちろんない
●ガスト ○○店  複数トイレに一個設置
 
歯磨きができない子どもに対して口をこじ開けて無理やり歯磨きさせてはなりません。
歯磨きの何が苦手か分析し工夫をしましょう。
 
音か?……力の入れ方を変える。
感覚か?……液体歯磨きでゆすぐ。
硬さか?……柔らかいものに変える。
歯磨き粉の味か?……水でブラシをするだけで十分
 
音に対して過敏性もある子どもも多いです。そんな時は耳栓をつけてあげましょう。
 


 
(9)パニックを起こした時はほっておく
パニックを起こし、泣き叫んだり、自傷行為(物に頭をぶつけたり、噛んだり自分の体を叩いたり、自分を傷付ける言葉を発すること)が始まると周りは焦り、何とかなだめようと「大丈夫よ」「静かにしなさい」と声をかけたくなります。けれどもこれは逆効果、見守りほっておいてください。声をかけること自体が刺激となってしまい逆効果になります。背中をさすって落ち着かせるなど感覚過敏な子どもにとっては最もされて嫌なことです。パニックを起こした時は一人で静かに精神を落ち着かせるために仕切りの裏などに避難させましょう。そういう避難場所を最初から作っておくのも一つの良い方法です。
 


息子の自傷行為の後の歯型
 
(10)薬を使う
小学校低学年の時代は学力の基礎を付ける大事な時期です。専門医の指示の元、薬を使い授業に集中できるようにすることも時には必要となります。
 

龍馬君の手記



 
夏休みの自由研究のテーマにアスペルガーの6年生の児童が苦しかった小学校6年間を書きました。これが出版されました。 その中には「綺麗に丁寧に!と言われるけれど何か綺麗なのか何が丁寧なのか余計わかりません。何ミリ長く、直角に45度にと言われるとわかりやすく楽です」と書いてあります。(※この本は書店やアマゾンでは売っていません。
http://www.tiotoss.jp/products/detail.php?product_id=191 を参考にしてください)
龍馬君は、その中で言う。
 
◇六年生だから自分で考えて行動しろと言われると、何をすればいいのか分からなくなる。
 
◇陸上練習のとき、口で「こうやって」と言葉だけで指示されて、分からなくてできなかった。
 
◇国語で「どんな様子ですか」「どう思いますか」と質問されると、意味が分からず、イライラしてくる。
 
◇やってはいけない事を、たとえ話でされると、さっぱり分からない。
 
◇顔の表情や身ぶりで何かを伝えようとされると、さっぱり分からない。
 
◇必要な言葉で、はっきりと伝えてほしい。
 
◇手のコントロールができないからバランスよく字が書けません。「きれいに」「ていねいに」と言われるけど、何がきれいなのか、何がていねいなのか分かりません。(抜粋)
 

診断を受けたら担任の先生に必ず伝えましょう

 

幼稚園や親から学校側にこれを伝えないで入学させると障害の特徴を理解されることなく学校生活を送ります。立ち歩きはAD/HD(注意欠陥/多動性障害)の特徴からきているのに「何で立ち歩いているんだ!」と365日叱られます。LD(学習障害)のため「読めない、書けない」のに「怠けている、努力が足りない」と叱られます。「自分は何をやっても認められない。こんなに努力しているのに勉強ができない」と悩みます。周りの友達も「あいつ、いつも先生に怒られてらあ、駄目なやつだ」といじめのターゲットになるケースもあります。そんなことが小学校6年間続くと、思春期以降「不登校・鬱」などの二次障害という形で現れます
 
人生は連続です。小学校入学6歳というのは行政の都合上、線が引かれているだけです。人生は長いです。人格の基礎は幼児期に作られます。 そして、その中で幼稚園・保育園の期間は一番重要です。「様子を見よう」「小学校に行けば何とかなるかも」「個性的なだけ」と先送りしない将来を見据えてその特性にあった子育てに切り替えましょう。
 
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立石美津子
1961年 12月大阪市生まれ
聖心女子大学 文学部教育学科・初等教育課程にて幼稚園教諭・小学校教諭免許取得後
石井式国語教育研究会にて故石井勲先生の元、全国の幼稚園・保育園に漢字教育を普及
「漢字はひらがなより易しい」という石井先生の教えにより“障害児教育が教育の基本”“障害時に理解し易い指導法は健常児にも分かり易い”の考えから、佛教大学にて特別支援学校教諭1種免許を取得し、障害児の漢字教育を行う。
平成7年 株式会社パワーキッズを設立。自らも自閉症児(知的障害を伴う自閉症なので発達障害の範疇には入らない)の子育てをしながら、現在、エンピツらんどの指導責任者として3歳から小学校3年生までの健常児・発達障害児の指導法の開発に奮闘中
著書に「小学校に入る前に親がやってはいけない115のこと」「読み書き算数ができる子にするために親がやってはいけない104のこと」(中経出版)がある。
ホームページ http://www.enpitsuland.com/
立石美津子のオフィシャルページ http://tateishi-mitsuko.com/
 
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黄野 いづみママそらディレクター

投稿者プロフィール

株式会社ママそら ディレクター
株式会社LIVLA 取締役
ピープルビヨンド株式会社 取締役
16歳で単身アメリカへ留学。学習院大学に入学・卒業し、その後に再度渡米。テレビ局や日系メディア会社にてインターンとなる。帰国後は出版社で、約10年間、広告営業や企画編集ライターなどに従事するとともに、プロジェクトマネージャー、チームリーダーを経験する。出産を機に独立。
「子どもの輝く未来のために、子どもの心を育み親子でHAPPY に!」をコンセプトに、木製玩具、アートグッズの輸入販売や心を育む遊びの提案を行っている。海外生活の経験を活かし、楽しみながら英語に触れることのできる遊びも紹介。グローバル時代を生きる子どものために、豊かな感性や表現力、発信力、人間力を育むプロジェクトに取り組んでいる。
株式会社ママそらでは創業時からディレクターを務め、複数のプロジェクトの統括やスタッフ管理・育成に携わるとともに、ライター育成も行っている。
HP  http://www.twinklekidsstar.com
Facebookページ https://www.facebook.com/kidsstarjapan

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