日本の音楽、古典の魅力~年齢に応じた学びの段階~


公益社団法人 能楽協会正会員 能楽師 小鼓方
森澤勇司

みなさん、はじめまして! 能楽師小鼓方の森澤勇司です。
能楽の舞台で小鼓を演奏しています。
明治からの音楽教育の改変で日本の音楽に触れる機会は少なくなってしまいましたが、
日本の音楽に触れることは非常に大切なことだと考えています。
そこで私のコラムでは、母から子に語って伝えたい能楽や
古典にまつわるお話をお送りいたします。
専門的なことではなく親子のコミュニケーションに役立つものを選んでご紹介します。

………………………………………………………………

 

能楽の伝書による成長の7段階とは?

皆さん、こんにちは。森澤勇司です。
 
今日テーマは「風姿花伝」です。これは能楽を大成した世阿弥(1364?~1443)が記した能楽の伝書です。「のうがく~? 関係なーい」と思う方にも、実は非常に役立つ“人材教育法”が記されているんですよ。
 
それは、「年来稽古條々」という章です。今回は、風姿花伝の解説と言うよりは、実際に読むときの下地になるような、基礎知識として知っておきたい情報に絞りこんでみました。
 
「風姿花伝」では能楽師の成長を7段階の年齢にわけて語っています。原文では「十二、三歳」という表現になっていますが、ここではわかりやすいように「12歳」として分類してみます。とても奥深い内容のものですが、ごくごくシンプルにしてみるとこういったものなのです。
 
(1)7歳
    こころのままにさせる。よい悪いと言い過ぎるとやる気を無くしてやめてしまう
(2)12歳
    細かなテクニックではなく基礎を固める
(3)17歳
    声変わりが始まり恥ずかしくなるが、ここでやめないこと
(4)25歳
    若さで人を引きつけたことを本当の実力と勘違いしないで稽古すること
(5)35歳
    この時に世間に認められる名望がないと40歳から下降する可能性がある。世間に認められていることが必要
(6)45歳
    どんなに世間に認められていても、舞台上のよいパートナーを持つこと。細かなことはせず相手に花を持たせながら演じること
(7)50歳    
    本当に実力があれば見どころは少なくなっても花が残っている
 

どうでしょうか。現代社会でも通じるような内容ではないでしょうか。多分、これを読んでいる方の中には7歳以下はどうなっているの? 幼児期は? と思う方がいるかもしれません。
 
実はこの年齢の教育方法はないのです。それは7歳までは神の預かりもので、いつ神様のところに帰ってしまうかわからないからだと言われています。現在では神様のもとへ帰ってしまうことも少なくなったので、2歳ぐらいから習い事に通っている方もいるかもしれませんね。ですからこの「7歳から」と書いてあることは、現代では2歳、3歳の方にも当てはまることだと考えられます。

 

 
 

まずは楽しんでいる姿を見せよ!

それでもイヤイヤ期は大変です。無理やり「やらせる」よりも楽しんでいる姿を「見せる」というのもひとつの方法です。
 
参考までにアメリカの心理学者ドナルド・スーパー(1910~1994)は職業的発達段階をこんな風に分類をしています。
 
(1)0歳
    働くことの意味を知る成長段階
(2)15歳
     職業についての希望が生まれる探索段階
(3)25歳
     職業での地位が確立する確立段階
(4)45歳
     確立した地位を維持する維持段階
(5)65歳
     セカンドライフに向けた下降段階
 
ドナルド・スーパーは適職を見つけるのは大切なことだが、確立を向かえないまま年齢を重ねてしまうと下降してしまうと語っています。
 
実は、500年以上も年代の差があるアメリカの現代心理学と日本の古典は非常に共通点が多いのです。
原文を読んでいただくのが一番良いのですが、改めて要約したものを眺めてみると「好きで楽しく継続できる事」は上達していくと言えると思います。
これに関して、論語で有名な孔子はこんな風に言っています。
 
「知っているという人は、好きでしている人にはかなわない、好きでしている人は楽しんでいる人にはかなわない」

 
皆さんのお子様も好きなことを楽しんで体験していらっしゃいますか?
 

 
第3回目は宮本武蔵「五輪書」の中で語られている能楽のお話をお届けします。
 
…………………………………………………………………
【森澤勇司】
公益社団法人 能楽協会正会員 能楽師 小鼓方
・1967年 東京都世田谷区生まれ。父は会社員、実家は商店経営という家庭環境で育つ。
・幼少期、外で遊ばせてもらえない環境だったので家にある本を読み空想を広げることを楽しみに育つ。いうことを聞かないと火箸で手を焼かれるような家庭環境で育つ。
・子どもの頃から、柔道、アメリカンフットボール、ギターなどを学んでいたが、高校卒業時に見た日本のミュージカルで「日本人には日本のものがよい」という思いをもち日本らしい仕事につくことを決意。「能楽」に興味を抱く。
・3年に1度の国立能楽堂養成事業2期生募集にであい思い立って3か月後には見たこともない能楽の修行に入る。
・平成11年独立「森澤勇司独立記念能」は高円宮憲仁親王も鑑賞。終演後「よい舞台でした」とお言葉を賜る。
・2010年「楊貴妃」出演中に脳梗塞のため集中治療室に入る。
・リハビリのために受講したアクティブブレインセミナーに感銘を受け講師資格取得。
・その後、コーチング、マーケティングなどを学ぶ中で海外自己啓発セミナーは「風姿花伝」「五輪書」など明治以前に日本で語られている教育法とほぼ同じだということを発見する。
・現在、能楽舞台への出演、小鼓の稽古、販売、日本の文化に関するセミナー、講演などを行っている。
森澤勇司WEBSITE
http://www.nohgaku.com/
 
 
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黄野 いづみママそらディレクター

投稿者プロフィール

株式会社ママそら ディレクター
株式会社LIVLA 取締役
ピープルビヨンド株式会社 取締役
16歳で単身アメリカへ留学。学習院大学に入学・卒業し、その後に再度渡米。テレビ局や日系メディア会社にてインターンとなる。帰国後は出版社で、約10年間、広告営業や企画編集ライターなどに従事するとともに、プロジェクトマネージャー、チームリーダーを経験する。出産を機に独立。
「子どもの輝く未来のために、子どもの心を育み親子でHAPPY に!」をコンセプトに、木製玩具、アートグッズの輸入販売や心を育む遊びの提案を行っている。海外生活の経験を活かし、楽しみながら英語に触れることのできる遊びも紹介。グローバル時代を生きる子どものために、豊かな感性や表現力、発信力、人間力を育むプロジェクトに取り組んでいる。
株式会社ママそらでは創業時からディレクターを務め、複数のプロジェクトの統括やスタッフ管理・育成に携わるとともに、ライター育成も行っている。
HP  http://www.twinklekidsstar.com
Facebookページ https://www.facebook.com/kidsstarjapan

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